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負けるな!管理薬剤師シリーズ[マナー・接遇 クレーム]
このコンテンツではクレーム対応について考察する。
本来、クレーム対応はマナーや接遇に含まれるかどうか疑問に感じる人もいるだろう。
しかし、マナーに関する書籍の中にはクレーム対応が書かれているものが多い。
このコンテンツでは、クレームを対応する際のコツを項目ごとに整理し、実際に患者さんにお話しするセンテンスをつけた。
薬局内でクレーム対応に関するミーティングを行う際のたたき台を想定している。
クレーム対応は、薬局のスタッフ全員が同じレベルの対応ができなければならない。
あなたの薬局の研修の材料になれば幸いである。
管理薬剤師のあなたが最初にするべきことは、「クレーム対応は、薬局における最優先業務である」ことを、スタッフ全員に認識させることである。
クレームに対する基本的な考え方や具体的な方法は、研修・ミーティングでも取り上げ、スタッフ全員に浸透するよう取り組む。
また、実際に発生したクレームをスタッフ全員で情報共有し、対応策を周知することも重要である。
以前、コンテンツ『調剤薬局で患者さんを増やす方法』の中で、クレーム対応について考察した。
クレームを対応する際の基本的な姿勢を解説した。
要点をまとめると、以下になる。
◇まとめ◇
・担当者が責任をもって、事実を確認する。(たらい回しにしない。)
・健康被害・体調の変化を確認する。
・必ず、メモする。
・薬局側に非があった場合、絶対に言い訳はしない。
・医師に報告する
・同じミスを防ぐための対策を考える。
原則的にはこの内容が基本になるのだが、このコンテンツではもう少し細かく対応のコツを考察する。
(なお、重要なポイントは重複している。復習をかねてお読みいただきたい。)
[事実を確認すること]
まず、クレームの内容を確認すること。
クレームに対応する場合、何もわからない段階でとりあえず謝罪する人がいる。
これは、正しい対応ではない。
(ただし、クレームを発信せざるを得ない手間をかけさせたことについては、謝罪してもよい。)
まずは、事実を確認すること。
その上で、薬局側に不行き届きがあれば、その点について誠心誠意あやまる。
事実を確認するとき、つまり、患者さんの話を聴く際に重要なのは、「途中で話を遮らないこと」と「メモを取ること」である。
絶対に覚えておきたい、センテンスはこれだ。
「私どもがご迷惑をおかけしているようですが、どのような不行き届きがございましたでしょうか?」
[健康被害・体調の変化]
事実の確認の中で、最も大切な項目は、患者さんの体調(症状)の変化である。
場合によっては、対応よりもなによりも、医療機関に受診をすすめる場合もあるだろう。
前項[事実を確認する]で、「メモを取る」ことが重要であることを書いた。
体調(症状)が変化した場合、「具体的な症状」と「時間」については、可能な限り詳しく記録を取ること。
薬との因果関係が推定しやすくなるためである。
詳しい情報をいただくためのセンテンスがこれだ。
「○○さんのお体の具合が最も大切ですので、詳しくお聞かせいただけませんでしょうか?」
[たらい回しにしない]
これは、クレーム対応に関する本には、かならず記載されている原則である。
ただし、この一文は、大きな意味を持っている。
この文を言い換えると、「スタッフ全員が基本的なクレームに対応できる」ということ。
クレーム対応は、研修やミーティングで取り上げるべきテーマといったのはこの理由からである。
管理薬剤師になりたてのころ、私はこのことが理解できていなかった。
ゆえに、発生したクレーム対応の失敗も一度や二度ではない。
クレームの基本的な流れ下記に示す。
①事実を確認する。
※緊急事態であれば、即時に対応する。
②問題を解決する。
③謝罪する。
④医療機関へ報告する。
⑤防止策を検討する。
この流れで「たらい回し」が問題になるのは、最初に対応したスタッフが別の人に対応を頼んだときである。
患者さんは、一度事情を説明したのに、新しいスタッフに交代したことで、もう一度説明が必要になったと考える。
たとえば、クレームの訴えがTELの場合、最初に受話器を取ったスタッフが事情を聴くことになることが多い。
このような場合は、患者さんの話を聴き、要約を復唱する。
復唱するとき、、重要な部分のみに要約してもよいが、自分の考えや想像は一切入れてはいけない。
もしも、対応するスタッフが交代する場合、患者さんに復唱した内容を報告し、聞き取りメモを渡す。
ちなみに、対応するスタッフが代わる場合、「○○に代わりまして私△△が責任を持って対処させていただきます。」と説明しなくてはならない。
クレームを最初に対応する場合のセンテンスはこれだ。
「その件につきましては、私○○が対処させていただきます。詳しい事情をお聞かせ願えませんでしょうか」
[問題解決までに重要なこと]
薬局側に不行き届きがあった場合、こちら側から出向くことが原則。
管理薬剤師は、必ず行くこと。
その時の服装は、くつろいだ格好やチャラいアクセサリーは禁止である。
大手企業では、濃紺やチャコールグレーなどの地味なスーツで訪問することが多い。
訪問当日の出発前に、これから伺う旨を連絡しておく。
クレームの内容によっては、対処や調査に時間がかかることもある。
この場合、とりあえず、中間報告を連絡することが重要である。
「○○を手配中ですが、3日後になる予定です」とか「これまでに○○と▲▲を確認しました。すべて調査するのには、あと3時間かかります」など。
[問題解決]
まず、問題が生じた原因を考える。
なぜ、問題が起きたのか?その一番大きな原因は何か?
これは、クレームの謝罪だけでなく、再発防止策を考える上でも重要なことである。
問題解決は、調査と分析からスタートする。
たとえば、患者さんから「○○という薬の飲み方がわからなかった」ので、間違えて服用したというクレームが発生したとする。
服薬指導をした薬剤師は「私は、キチンと説明しました」と言い、薬情・薬袋の内容も間違いが無いことが確認された。
あなたは、このような場合に、どのようにクレームを分析するだろうか?
私は、このようなケースでは次のように考えてきた。
・患者さんが勘違いをするのは、薬局の責任である。
・服薬指導は、患者さんが正しく服用できるために行うからだ。
・服薬指導では、何を説明したかではなく、何を理解していただけたかが重要である。
・これを基本的な考えとして、クレームが発生した患者さんの処方内容を確認する。(薬剤数、用法用量など)
・さらに、多剤併用、視力・聴力に障害のあるケース、認知症などの患者さんの服用状況を再度確認しよう。
分析するときに注意が必要なのは、誰でも自分の責任を少なくしようと考える点である。
分析が中途半端であれば、患者さんへの「謝罪」や業務の「改善」は難しい。
クレームの問題が解決した時点で、患者さんにはどのような「改善」をしたかを説明し、その指摘をいただいたことに「感謝」をしよう。
[最後に]
以上、クレームに関して考察した。
現場ではいろいろなケースがあり、患者さんの性格や薬局のシステムも異なるため、マニュアル通りにはいかないことの方が多いだろう。
多くのパターンを経験して、スキルアップする部分が大きいテーマなのである。
その部分を補うものとして、情報の共有がある。
発生したクレームは、薬局のスタッフ全員で共有し、ケーススタディとして大切に勉強する。
現在、企業の多くは「クレームは宝もの」という認識をしている。
改善の絶好の素材になるからだ。
薬局のシステムを改善し、患者さんとの信頼関係を強固にし、あなたの対人コミュニケーションスキルを磨く。
クレームは決して嫌な業務ではないのである。
[参考資料]
・薬局・薬剤師のための接遇マニュアル‐国民・患者からの意見を踏まえて‐
(社)日本薬剤師会 平成16年3月
・どんな患者からもクレームがこない接遇のルール
濱川博招・島川久美子 著 (株式会社エクスナレッジ)
・これでクレーム対策は万全!究極の謝罪術(株式会社 アクタスソリューション)
以上
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