負けるな!管理薬剤師シリーズ[マナー・接遇 ホスピタリティ]


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がんばれ!新人薬剤師シリーズ[マナー・接遇 薬局内のマナー・心がまえ]

 

 

 

[ホスピタリティとは]

「ホスピタリティ」にはいろいろな定義があるが、もっとも一般的な日本語訳は「おもてなしの心」である。

もとは、西洋における聖地への巡礼の旅において、旅人を援助することが原点であるようだ。

米国ではホスピタリティビジネスという分野があり、ホテル、レストラン、エアライン、テーマパークなど、施設や設備を使ってお客さまをもてなすビジネスを指す。

だから、ホスピタリティを説明するときには、ディズニーランドや一流ホテルのエピソードが紹介されることが多い。

 

具体例を一つ紹介しよう。

 

帝国ホテル本館中二階に「オールドインペリアルバー」がある。

・・・中略・・・

オールドインペリアルバーは常連客が多いことでも知られる。雰囲気が重厚でクラシックだからだけではない。居心地もよい。

バーテンダーはお客さまの注文があると、一杯目はグラスをお客さまの右斜め前に置く。

しかし、二杯目以降、おく場所をさりげなく変えることが多い。お客さまは無意識のうちに、自分で扱いやすい位置において飲む。

その飲みやすい位置を確認しておいて、二杯目以降、当たり前のようにその位置におく。

その対応があまりにも自然なため、お客さまは気づかない。

「帝国ホテル サービスの神髄」国友隆一(経済界)P.18 より引用

 

このようにお客さまの気持ちを察した、思いやりにあふれた心遣いや行動をホスピタリティと呼ぶ。

このコンテンツでは、『患者さんの立場を考えた心遣い・おもてなし』と定義をして、考察する。

 

 

 

[ホスピタリティの重要性]

ホスピタリティは、娯楽施設や飲食店だけに特有のものではなく、医療施設でも展開している。

調剤薬局においても、患者さんを増やす最強の戦略の一つは、ホスピタリティの充実といってもいいだろう。

(ただし、調剤業務の腕を上げることは、必要条件である。)

驚異的なリピート率を誇るディズニーランドでは、お客さま(ゲスト)がディズニーランドを再訪する最も大きな理由が、従業員(キャスト)の対応であると分析している。

 

薬局の価値とは、何で決まるのだろうか?

小売業では、価格(Price)がその店の価値を決める大きな要素になっている。

しかし、薬局は基本的に一律の価格体系である。

薬自体の品質(Quality)も、薬局で向上させることはできない。

つまり、「薬剤師の能力」、「場所」、「待ち時間」、「サービス」が薬局の価値を決める大きな要素になると考えられる。

今後は、これに行政が目指す地域医療への対応力、たとえば、「在宅」「24時間調剤対応」などが加わる。

これらの要素のうち、努力により向上が期待できるのは「薬剤師の能力」と「サービス」の2点である。

※「待ち時間」は、努力によってある程度改善できるが、時間帯や患者さんの処方内容などの条件に左右される。

ホスピタリティは、この「サービス」の要素のもっとも大切な考え方である。

 

つまり、薬剤師の能力に差がつきにくい患者さんには、スタッフの対応が他の薬局に差をつけることができる項目になるということ。

たとえば、毎回同じ降圧剤を1種類だけ処方されている患者さんには、なかなか薬剤師の能力を披露するのは難しい。

しかし、自分が薬をもらう薬局が「清潔で整理されて」おり、スタッフは「笑顔で気持ちよく」対応してもらえば、かかりつけの薬局になりやすいということなのだ。当たり前のことなのに、取り組んでいる薬局はどれだけあるだろうか?

 

 

 

[具体的に何をするか?]

ホスピタリティとは、患者さんの立場で考えるおもてなしである。

患者さんは一人一人異なるため、厳密に言えば患者さんの数だけおもてなしがあることになる。

だから、マニュアル化はできない。

しかし、落胆することはない。

ディズニーも帝国ホテルも、お客さまへの個別対応だけをしているわけではないからだ。

基本は、好感を持っていただけるようにお客さまと接することである。

良好なお客さまとのコミュニケーションがあって、お客さまの本心を聞かせていただき、問題を認識し、解決策を考えることができるのだ。

 

さて、お客さまとの良好なコミュニケーションのためにすべきことである。

第一に行うのは、「あいさつ」である。

難しいことではない。

笑顔で、患者さんの目を見て、聞き取りやすい声で、礼儀正しい容姿で、あなたからあいさつしているかを確認するだけである。

自分も他のスタッフも、案外、できていないことに気づくだろう。

 

第二に、「患者さんが困っていること」を解決するという姿勢を持つこと。

そのためには、明日から3点だけ努力する。

・少しだけ注意深く患者さんを観察する。

・こちらから「お困りのことはございませんか?」とお声掛けする。

・気がついたことをメモする。

※薬局の中に、患者さんのご意見を自由に投書できる「目安箱」を設置するのもよい。

 

ちなみに私が実際にメモした内容を紹介する。

・薬局内の清掃・整理

→患者さんの一人から、薬局内の清掃状況をほめられた。

→清掃はかなり良いレベルだが、整理(製薬企業からの郵便物、雑誌など)を工夫する。

・積極的な笑顔のあいさつ

→自分の反省である。※患者さんの方を見ずに、声だけであいさつをしていたのだ。

・雨の日の床

→患者さんが滑らない工夫を考える。

・杖立て

→高齢者のお客さまが多い業種で行なっている工夫をチェックするようにしよう。

・ひざ掛け

→私の薬局は、床がコンクリートにPタイルを張ったもので、冬場は非常に冷える。

・ベビーカーを置くスペース

→混み合った時、親子連れを不快にさせないようにするにはどうしたらよいか?

→小児科、産婦人科(または、その門前薬局)に行ったら勉強するべし。

 

この中には、薬局の構造上の問題もあって、すぐには解決しないテーマもある。しかし、薬局を建て直す以外の解決策もあるのだ。

また、特定の患者さんだけではなく、複数の患者さんの役に立つ改善項目があることが理解いただけよう。

大切なのは、あなたの薬局でできることを始めることだ。

 

次に、薬局におけるお客さま(患者さん)の特性を考える。

普通の小売業のお客さまと異なるのは、患者さんは「不安」を抱えているということ。

痛み、苦しみ、心配、将来を悲観することなど、病気に伴う心のダメージは「不安」を増大させる。

患者さんの不安を軽減させるには、どうすればよいかを考えるのが第三に行うべきことだ。

 

私は、「やさしい応対」と「わかりやすい説明」の2つが最も重要だと考えている。

笑顔、優しい一言、ちょっとした気配りが患者さんの不安を軽減させる。

この薬局のスタッフは、私の味方だと感じていただくのが大切なのだ。

同じように、病態や薬物療法のわかりやすい説明も効果的である。

人は、状況がわからない時に不安になるからである。

これは、調剤業務とリンクしているテーマと考えてよい。

 

以上が、私が考える薬局における具体的な行動である。

この章の最後に、重要な前提を話しておきたい。

それは、ホスピタリティを効果的にするためには、本道の調剤業務がしっかりできていなければならないということ。

どんなに素晴らしいサービスを行うレストランがあっても、料理が不味ければリピーターは生まれない。

調剤業務もホスピタリティも共に高めていかなければならない。

 

 

 

[マニュアルを超えたサービス]

日本では、「経営理念」を持つ企業は約半分といわれている。

ところが、この「経営理念」は非常に大切なのである。

 

「経営理念」とは、「何のために仕事をするか」ということである。

自分の会社の仕事が、どのように社会に貢献するかを明文化したものといってもよい。

つまり、経営理念は、社員の行動の指針なのである。

業務の判断基準となり、仕事の優先順位が明確になるのである。

もしも、あなたの薬局に「経営理念」がなければ、一度真剣に考えてみてほしい。

そして、スタッフ全員で共有できるわかりやすい「理念」を制定してほしい。

その文言は違えど、患者さんの利益のために働くことは、薬局に共通のはずだ。

その目的をスタッフ全員が認識することで、初めてマニュアルを超えたサービスが可能になると思う。

そして、その理念の元に働いている限り、自分の仕事に誇りを持つことができるのだ。

 

 

 

[参考資料]

・「帝国ホテル サービスの神髄」

国友隆一(経済界)

 

・「ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法」

ディズニー・インスティチュート:著、月沢季歌子:訳 (日本経済新聞出版社)

 

・「サービス業のためのホスピタリティコーチング」

清水 均(日経BP社)

 

 

以上

 

 

 

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