[認知症PLUS]⑧成年後見制度


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[認知症PLUS]⑧成年後見制度

 

 

このコンテンツでは「成年後見制度」の注意点について考察する。

あなたは、「成年後見制度利用促進法案」が国会で成立したことをご存じだろうか?

この法案は、2016年3月23日に国会に提出され、4月8日の衆議院本会議で成立した。

認知症高齢者の増加を見据え、後見人のなり手を増やすことが主な目的であり、5月上旬までに施行される予定である。

それに併せて後見人の権限を拡大する民法などの改正法(「改正民法及び家事事件手続法」)も、6日の参院本会議で可決して成立している。

 

そもそも、「成年後見制度」とはどのような制度なのか?

「成年後見制度」とは、認知症や知的・精神障害などで判断能力が不十分と考えられる成人に対し、財産の管理、契約行為を支援する後見人をつける制度である。預貯金や不動産などの財産管理、介護サービスや施設入所の契約、遺産分割などの法律行為の支援および悪徳商法による被害を防ぐために制定され、2000年に介護保険制度と併せて導入された。

従って、2000年以降に出された認知症のケアの本には、必ず紹介されている制度である。

この制度は2014年末で18万4670人が利用しているが、認知症高齢者が2012年に約460万人であることを考えると利用数は低いのが現状である。

認知症高齢者は2025年には700万人になると推計されており、悪得商法や財産搾取などの被害を防ぐための手立てを早急に講じる必要があるため、この法案が提出された。

 

このコンテンツでは、「成年後見制度」の注意点に着目する。

制度の批判が目的ではないため、制度自体の問題点や国連障害者権利条約との整合性などについては触れない。

認知症の患者さんやそのご家族が、この制度の活用を検討するときに、予め把握しておくべき注意点は何かを考えるのが目的である。

なぜなら、この制度を中止することは簡単にはできないからだ。

だから、慎重に考え、適正に活用してほしい。

ちなみにこのコンテンツで取り扱う内容は、成年後見制度の紹介記事には、書かれていないことが多い。

 

まず、簡単に「成年後見制度」のポイントを確認する。

この制度は発達障害、精神病、痴呆性疾患などのために、自分の資産の管理・処分を自分で行う能力が不十分な人の資産を守り、同時に自分で資産を活用できるように支援することを目的としている。

保護・支援する人を「(成年)後見人」、される人を「被後見人」という。

成年後見制度には、「法定後見制度」「任意後見制度」の2つがある。

 

 

「法定後見制度」

法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、障害の程度により、どの区分になるかを家庭裁判所が決定する。

区分が3つに分かれているのは、障害の程度によって権利の範囲が異なっているからである。

権利とは、同意権、取消権、代理権の3つである。

被後見人が結んだ契約を有効にするためには成年後見人の同意が必要になる。これが同意権である。

取消権とはその反対で、被後見人が契約した後であっても契約を取り消すことができる権利である。

代理権は、被後見人に代わって、その財産の管理・処分に関する契約を結ぶ権利である。

 

この成年後見人は、家庭裁判所が本人のためにどのような保護・支援が必要かを勘案し選任する。

つまり、法定後見制度は成年後見人を誰にするのか、どのような権限を持たせるのかなどを、家庭裁判所が法律に基づいて決定するのである

 

 

「任意後見制度」

任意後見制度は、自分で成年後見人とその権限を決めることができる制度である。

自分で決めるということは、判断能力がある間に成年後見人になる人と権限を考え、契約を結ばなければならないということ。

ここでの契約とは口約束ではだめで、公正証書を作って正式な契約を結ばなければならない。

ちなみに任意後見人は、契約の範囲内で代理権を持つが、同意権・取消権は持てない。

 

 

非常に大まかに2つの制度を説明したが、本人の判断能力が衰えてから保護・支援が必要になった場合には、実質的に法定後見制度を利用することになるだろう。

 

では、このコンテンツの主題である成年後見制度の利用を考えたときに知っておくべき注意点を考察したい。

 

 

 

[成年後見制度を考える前に知っておきたいこと]

①必ずしも親族が後見人になるとは限らない。

後見人を親族の候補者で申請しても、場合によっては法律・福祉の専門家、福祉関係の公益法人などの第三者が選任される可能性があるということ。

ちなみに後見人に対しては、報酬(月2~5万円程度)が発生することも覚えておきたい。

 

②後見人は報告が義務付けられている。

後見人は、定期的に家庭裁判所に「後見事務報告書」の提出が義務付けられており、複雑なものではないが本人の収支状況をきちんと報告しなくてはならない。つまり、日頃から入院費の領収書などを紛失しないよう気を付ける必要があるということ。

 

③後見人は簡単には変更できない。

親族が後見人に選任されなかったので、後見人を変えたいと思っても簡単にはできない。

後見人が変更されるのは、不正な行為、素行が著しく悪いなどの後見人として不適格な場合に限られる。

 

④財産の使用が制限される。

当たり前のことだが、被後見人の財産を守る制度なので、厳しい制限がかかる。

しかし、この制限が持つ意味が重要なのである。

たとえば、相続についてである。

生前贈与や生命保険契約による相続対策は、できなくなると考えた方がよい。

これらの行為は、被後見人へのメリットはないのに、本人の財産は減少するからである。

 

※後見人が被後見人のために必要な出金をする場合

後見人が本人名義の預貯金から出金する為には各金融機関で「後見の設定」を行い、後見人の権限下の口座にしなくてはならないが、後見設定の扱いは金融機関ごとに異なることも大切である。

 

⑤取締役、鑑査役になれない。

そもそも自分の財産が管理できない状態なので、会社の運営を任せられるはずもない。

しかし、同族会社など家族で会社を経営しているような場合は、名前だけ取締役に入っているケースはあるだろう。

もしも、会社の取締役が被後見人となった場合は、直ちに役員変更を行わなければならない。

 

⑥資格の喪失

当然、本人は働ける状態ではないと思うが、国家資格も喪失することも覚えておきたい。

(たとえば、医師、薬剤師、弁護士など。)

 

以上、6点ほど注意点をまとめた。

これらのほとんどは、制度の利用を専門家に相談したときに得ることができる情報だが、予め制度の概要とともに知っておくべき情報だと思う。

 

 

 

私がこのコンテンツを書こうと思ったのは、成年後見制度は一度利用すると「利用中止は簡単にはできない。」からである。

法務省が作成している成年後見制度のパンフレットには以下のQ&Aが掲載されている。

 

Q:法定後見が開始した後で、制度の利用をやめることはできますか?

A:成年後見制度は判断能力が不十分な本人の権利を保護するための制度ですので、本人の判断能力が回復したと認められる場合でない限り、制度の利用を途中でやめることはできません。

 

たとえば認知症の場合、種類にもよるが、アルツハイマー型認知症で判断能力が劇的に回復するケースはほとんどない。

だから、慎重に考え、適正に利用してほしい。

被後見人もそのご親族も両者にメリットがある計画的な利用方法があるかもしれないのである。

 

成年後見制度は利用促進法案が成立したことによって、利用者が増えることが予想される。

それは、あなたが認知症の患者さんやそのご家族から相談される機会が増えるかもしれないということである。

患者さんやご家族から相談をいただいた場合は、成年後見制度の主旨・概要とともに次の言葉を必ず付け加えてほしい。

 

『成年後見制度は、必ず専門家の詳しい話を聞いたうえで、慎重にお決めください。』と。

 

 

以上

 

 

 

[参考資料]

・「成年後見制度・成年後見登記」パンフレット

法務省

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html

 

・弁護士相談Cafe

http://相続弁護士カフェ.com/souzoku-11102.html

成年後見制度の問題点&できないこと&解任方法 2016年度版

 

・ふぁみりお 第44号2008年6月25日発行

http://www1.odn.ne.jp/fpic/familio/familio044.html

 

・認知症を早くみつける!東大生のブログ

東大認知症政策チーム

http:// dementiapj.hatenablog.com/entry/2014/10/18/200901

 

 

 

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