[高齢者の薬物療法PLUS]②高齢者の薬物療法の問題点


前章 >> [高齢者の薬物療法PLUS]①前口上

 

 

 

 α 在宅PLUS 

[高齢者の薬物療法PLUS]②高齢者の薬物療法の問題点

 

 

このコンテンツでは、「高齢者の薬物療法の問題点」を整理する。

高齢者の薬物療法で問題になるのは、「薬物有害事象」が増えることである。

これは、いろいろな因子が絡んでいるが、最大の原因は「高齢者の生理的変化」と「服用薬剤数の増加」である。

 

高齢になると体の生理的な変化が生じる。

それは-主に臓器機能の低下なのだが-薬物動態や薬力学的な変化を意味している。

特に、薬物の代謝や排泄機能が低下し、その結果、過量投与になってしまうケースが最も多い。

(通常の成人量でも過量投与になってしまうのである。)

 

高齢になるほど病気になる確率は高くなる。

疾患の数が多くなればなるほど、服用薬剤数は増えていく。

薬剤数が増えると、いろいろな問題が発生する。

具体的には、「相互作用の発生率が増加する」「処方過誤、調剤過誤の発生率が増加する」「患者さんのアドヒアランスが低下する」などである。

 

しかも、高齢者の病気は慢性疾患が多いため、薬も長期服用になる。

受診する科や病医院も増えるため、重複投与の可能性も高くなる。

服用薬剤数の増加に伴い、薬物有害事象の発現頻度は上昇する。

その症状は、中枢神経系、電解質異常、消化器症状が70%以上を占める。

 

高齢者における多剤投与の実態について、国立長寿医療センターの解析報告がある。

同センターの入院データベース(2009年1月~2009年12月)から、65歳以上の2484名のうち内服薬を服用していた2001名を対象に解析した。

その結果、6剤以上の多剤投与は全体の37.5%、平均処方薬剤数は4.9剤であった。

 

この問題を解決するために、薬剤師ができることを考えていくのだが、ここに大きな問題がある。

それは、「個体差」である。

高齢者は個体差が大きいので、薬物投与量を年齢、体重、体表面積などの指標で決めることはできない。

小児の体表面積法などの薬用量の計算式がないのである。

したがって、その患者さんごとに個別戦略を立て、薬物投与量を考えなければならない。

疾患と症状に加えて、ADL機能、嚥下機能、住環境、性格などを考慮し、総合的に判断しなくてはならない。

最適な薬剤とその剤型の選択、用量設定、投与方法を選択し、薬識や残薬の確認、相互作用の確認を含めてフォローしていく。

非常に難しいテーマだが、薬剤師が職能を最も発揮できる分野といってよい。

次のコンテンツでは、「高齢者の生理的変化」についてまとめる。

 

 

 

[参考資料]

・「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」日本老年医学会(メジカルビュー社)

 

・「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」第48回日本老年医学会学術集会記録 

秋下雅弘:日老医誌 2007;44:31-34

 

・「高齢者に対する多剤投与等による影響把握と症状別の投与選択法に係る研究」(長寿医療研究委託事業 総括研究報告書)

古田勝経:日老医誌 46:271-274,2009

 

 

以上

 

 

 

次章 >> [高齢者の薬物療法PLUS]③高齢者の生理的変化

 

 

 

α 在宅PLUS ナビゲーション

[高齢者の薬物療法PLUS]①前口上

[高齢者の薬物療法PLUS]②高齢者の薬物療法の問題点 ←今ココ

[高齢者の薬物療法PLUS]③高齢者の生理的変化

[高齢者の薬物療法PLUS]④腎機能低下時

[高齢者の薬物療法PLUS]⑤アドヒアランス

[高齢者の薬物療法PLUS]⑥高齢者に注意するべき薬

[高齢者の薬物療法PLUS]⑧おまけ 一包化について

 

 

 

↓ もし良かったら、この記事をシェアしていただけると嬉しいです。


Tagged on: ,