[認知症PLUS]①前口上


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[認知症PLUS]①前口上

 

 

「認知症PLUS」は、認知症に関するいろいろな情報をシリーズで考察するものである。

 

薬剤師の業務は時代とともに進化していく。

2016年度の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師・薬局の評価が見直された。

具体的には、かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度、残薬・重複投薬・不適切な多剤投薬・長期投薬を減らすための取組など医薬品の適正使用の推進における評価である。

処方せんに基づき、薬を正確に用意することが主な業務の時代は過去のものになりつつある。

このような変化に、薬剤師はどのような知識武装をすればよいのだろうか。

 

私が考える標準的な薬剤師の勉強とは、「病気の基本的な情報」と「治療薬の情報」である。

「病気の基本的な情報」とは、病態・診断・治療の概要であり、典型的な情報源は「疾患治療ガイドライン」である。

「治療薬の情報」とは、その疾患の薬物治療に用いられる薬剤のプロフィールであり、個々の薬剤の情報はもちろん、同効薬の特徴や使い分けなども含まれる。

 

しかし、これらの情報だけでは不十分な疾患がある。

たとえば、「認知症」。

なぜなら、認知症においてもっとも重要なのは「ケア」だからである。

認知症は、いろいろな原因疾患があるのだが、原因疾患のタイプによって病態・症状が異なる。

しかも、同じ疾患でも人によって進行も大きく異なる。

つまり、完治が見込めないタイプの認知症で、10年以上も治療・ケアが必要な場合もあるということ。

 

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状」に分けられる。

「中核症状」は、脳細胞が破壊されることによって直接起こる症状である。

脳神経細胞の脱落による症状のため、基本的には改善させることはできない。

(認知症治療薬で、症状の進行を抑制することは可能である。)

一方、「周辺症状」は、本人の性格や心理状態、環境、人間関係などの要因が基になって起こる症状なのだが、ケアによって軽減する可能性が高いのである。

 

完治が見込めないタイプの認知症が、長期の闘病になるケースがあること。

また、介護の大きな問題になることが多い「周辺症状」は、ケアによって軽減できる可能性があること。

この2つの理由により、認知症では「薬2割、ケア8割」と言われている。

 

「確かに認知症ではケアが重要だけど、薬剤師に本当に勉強が必要なの?」

このように感じている人もいると思う。そもそも、実際の業務のほとんどは調剤なのに、本当に勉強しなければならないのか。

これは、このコンテンツを作成するにあたり、最初の問題になったことである。

我々は、長時間の議論の末、このように結論した。

 

「認知症の基本的な治療戦略は、ケアも含めて勉強するべき。ただし、薬物治療以外は専門書を読むほどの詳しい情報は必要ない。」

 

だから、このコンテンツは、ケアや制度の情報を非常にコンパクトにまとめた。

最低限、知っておくべきことを整理したのである。

毎日が忙しい人でも専門書を読むより、はるかに短時間で読めるはずだ。

 

私は、薬剤師がケアを勉強することは、以下のメリットがあると考えている。

 

①患者さんへの接し方が変わる。

患者さんにとって、あなたは家族以外でつながることができる数少ない一人である。

 

②介護者(ご家族)への有用な情報提供が可能になる。

 

③在宅のチーム医療におけるあなたの業務が充実する。

他職種への理解、解決策、疾患への視点がワンステージ上のものになる。

 

④介護者(ご家族)の悩み・グチを聴く姿勢が変わる。

たかが、グチと言うなかれ。これは、介護者にとって大切なケアである。

 

このように、これまでの薬物治療への貢献に加えて、プラスαの貢献が可能になる。

これは、「かかりつけ薬剤師」になるための差別化になるであろう。

 

 

 

では、コンテンツの内容について紹介する。

このコンテンツは7つのシリーズから構成されている。

以下に認知症のケアの基本的な戦略を紹介するが、その流れに沿ってコンテンツが構成されている。

 

まず、認知症の基本的な情報を復習する。

代表的な認知症の違いを簡単に説明し、その薬物治療の基本的なポイントを整理する。

→コンテンツ[②いろいろな認知症]

→コンテンツ[③薬物治療で覚えておくこと]

 

認知症のケアについては「認知症のケアの基本戦略」に沿って、コンテンツを配置してある。

<認知用のケアの基本戦略>

・生活に必要なことを一律に行うケアからその人に必要な個別のケアに

現在のケアの考え方は、このように変化している。

この考え方を「パーソンセンタードケア」という。

→コンテンツ[④パーソンセンタードケア]

 

・社会資源を有効活用し、介護者の負担を軽減(分担)する

→コンテンツ[⑤薬局でできること]

 

・患者さんの症状についての理解をすすめる

→コンテンツ[⑥ケアする人が知っておくべきこと]

 

・患者さんと人・社会との「つながり」を大切にする。患者さんに「できること」を考える。

→コンテンツ[⑥ケアする人が知っておくべきこと]

→コンテンツ[⑦廃用性症候群]

 

・一手先を読む(将来の準備、そのための情報入手)

→コンテンツ[⑤薬局でできること]

→コンテンツ[⑧成人後見制度]

 

薬剤師はあくまでも「薬のプロ」であり、「ケアのプロ」になる必要はない。

しかし、ケアの基本的な考え方を知っておくと、大きなメリットがあるのは間違いない。

私は、恥ずかしながら、「薬2割、ケア8割」も「パーソンセンタードケア」も「成人後見制度利用促進法案」も「廃用性症候群が精神活動に適応できること」も知らなかった。

もちろん、現在でも患者さんのケアの問題は解決できないが、解決の窓口や考え方はわかっている。

それは、認知症の調剤業務への大きなPLUSになると信じている。チーム医療への貢献になると考えている。

このコンテンツが、専門書を読む時間のない薬剤師の役に立てば、望外の幸せである。

 

[認知症PLUS]コンテンツ一覧

①前口上

 

②いろいろな認知症

代表的な4つのタイプの認知症について情報を整理する。

薬の管理と服薬介助

 

③薬物治療で知っておくべきこと

認知症治療薬の重要ポイントまとめ

服薬介助の工夫

 

④パーソンセンタードケア

イギリスの心理学者トム・キットウッドにより提唱された認知症ケアのための理念

 

⑤薬局でできること

薬に関すること

情報に関すること

話を聞くということ

情報提供のための資料集

 

⑥ケアする人が知っておくべきこと

認知症の患者さんへの接し方

認知症ケアのテキスト

介護保険制度の改正

その他

 

⑦廃用症候群

いろいろな疾患に応用可能な大切な知識

 

⑧成年後見制度

2016年 利用促進法案が成立

 

 

以上

 

 

 

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[認知症PLUS]⑥ケアする人が知っておくべきこと

[認知症PLUS]⑦廃用症候群

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[服薬指導 睡眠薬]基礎篇

[服薬指導 睡眠薬]指導篇

 

 

 

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