[すご本2 抗精神病薬の「身体的副作用」がわかる]


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[すご本2 抗精神病薬の「身体的副作用」がわかる]

 

 

抗精神病薬の「身体的副作用」がわかる

長嶺敬彦 医学書院

 

この本の著者は、精神科病院で働く内科の医師である。

日々の臨床のなかで、経験的に集めた抗精神病薬の副作用とその対処法がまとめられている。

精神科、神経内科に携わる医療関係者はもちろん、抗精神薬を扱うすべての薬剤師にオススメする。

 

この本のサブタイトルは、“The Third Disease”なのだが、「はじめに」でその由来が説明されている。

統合失調症の患者さんは、3つの病気とたたかっている。

第一の病気は統合失調症。

第二は、偏見(スティグマ)。統合失調症を患うことで生じる社会・家族との軋轢。

そして、第三は抗精神病薬によって身体にあらわれる「副作用」である。

これを著者は、“The Third Disease”と名付けているのだ。

本書は抗精神病薬の身体副作用を最小限にするために書かれたものである。

取りあげた抗精神病薬の副作用は20種類あり、病態別に解説されている。

 

副作用は、非常に大切な勉強テーマなのだが、あまり面白いと感じる人は少ないと思う。

自分が経験した副作用のテーマについて調べるときは別だが、副作用だけの本を一冊通読するのはキツイと感じる人もいるだろう。

しかし、この本は面白いのである。

まず、わかりやすい。

コンパクトに、副作用の病態と発生メカニズム、その副作用の対応が説明されている。

そこに著者が経験した症例のエピソードやデータが入っている。

著者が病棟を歩いて、実際に治療した経験が語られている。

自身の経験と副作用の解説を最適にミックスし、わかりやすい言葉で簡潔にまとめられているのである。

もちろん、抗精神病薬の「身体的副作用」という切り口もすばらしい。

 

なお、本書は付録として手帳が添付されている。

もちろん、本書の内容を臨床で活用するためのまとめである。

 

=付録目次=

・「身体副作用」の初期症状と対処法

・抗パーキンソン病薬、抗コリン作用の強い抗精神病薬による「身体副作用」

・抗精神病薬の等価換算

・抗精神病薬に必要な検査(代謝系)

・APAガイドラインより

 

 

薬の勉強をすると、薬理作用は効果を理解するために解説されていると勘違いすることがある。

特に新しい作用機序の場合、有効性の根拠として説明される場合が多い。

しかし、本当は、効果とともに副作用を理解するための薬理作用なのである。

副作用の発生メカニズムの理解は、適切な投与量や副作用の予防に確実に役立つ。

本書は、そのことを教えてくれる。

われわれ薬剤師は、そのことを再認識するべきであろう。

 

また、本書には添付文書には記載されていない副作用が紹介されている。

たとえば、「バクテリア・トランスロケーション」「肥満を介さない代謝障害」「水中毒」などである。

私はこのような病態を初めて本書で知ることができ、大変勉強になった。

これにより、抗精神病薬を服用されている患者さんに対する観かたが変わる。

薬が変更になったときの副作用のトレースや症状の変化に活用したい。

 

この本は、精神科に従事する医薬関係者が主な対象になると思うが、あなたの薬局で抗精神病薬が1剤でも採用されているなら本書を読むべきである。

あなたの副作用に対する観かたや考え方が変わるであろう。

 

 

 

=目次=

はじめに-Third Diseaseとは

Ⅰ ウサギの治療からカメの治療へ

Ⅱ 臨床に潜む「身体的副作用」20

  Lecture 抗精神病薬とは何か

a・・・循環器系

 1 不整脈

 2 肺動脈血栓塞栓症(隔離室症候群)

b・・・呼吸器系

 3 誤嚥性肺炎

 4 肺結核

c・・・消化器系

 5 麻痺性イレウス

 6 バクテリアル・トランスロケーション

 7 急性胃拡張

d・・・内分泌・代謝系

 8 メタボリックシンドローム

 9 肥満

  Lecture 副作用としての「痩せ」

 10 高脂血症

 11 糖尿病

 12 肥満を介さない代謝障害(ビヨンド・メタボリック・シンドローム)

 13 水中毒

 14 悪性症候群

 15 横紋筋融解症

 16 高プロラクチン血症

e・・・神経・運動器系

  Lecture 錐体外路症状の種類と区別

 17 錐体外路症状

  Lecture 「副作用止めとしての抗パ薬」の危険性

 18 骨折

f・・・免疫・アレルギー系

 19 皮膚疾患とアレルギー

 20 顆粒球減少症

Ⅲ 副作用を考えるときに知っておきたいこと

  Lecture 多剤併用を避けるために

 1 主観的副作用にも配慮しよう

 2 「みずから飲む」薬になるために

 3 ドーパミン仮説とサリエス

  Lecture 統合失調症と糖尿病

おわりに-過鎮静の鎖を断ち切るために

 

 

以上

 

 

 

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