[すご本15 ヘルスリテラシー]


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 5  すご本 

[すご本15 ヘルスリテラシー]

 

 

「ヘルスリテラシー」健康教育の新しいキーワード

福田洋・江口泰正 編集

(大修館書店)

 

 

 

本書は、「ヘルスリテラシー」の日本で初めての本格的な専門書である。

この本の対象者は健康教育に携わる方になるが、私が特にオススメしたいのは、健康サポート薬局の薬剤師(または、健康サポート薬局を目指す薬剤師)である。

 

これからの日本において「セルフメディケーション」は最も重要なキーワードだが、「ヘルスリテラシー」はその核心のひとつに相当する。

正直に告白するが、実は私自身「ヘルスリテラシー」を正確に理解していなかった。

なんとなく、健康情報の信ぴょう性を評価できる能力のように思っていた。

もちろん、その要素も含まれているのだが、それだけでは不十分である。

ヘルスリテラシーの定義は「健康や医療に関する情報を入手し、理解し、評価し、活用する力」である。

「活用する力」とは情報を使うことでより健康に結びつくような、よりよい意思決定を行うことである。

 

米国の2003年の全国調査では、一般の文書にある医学用語の意味を正確に理解できる人は12%であり、「基礎レベル以下」の人が36%であると報告された。

また、日本における調査では「ヘルスリテラシーに問題がある」人の割合は85.4%であった。

ヘルスリテラシーが不十分であることは、健康へのマイナスの影響を及ぼすことが指摘されている。

たとえば、病気、治療、薬の知識が少ないため、疾患の初期兆候に気づきにくい。また、長期的・慢性的な疾患の管理も問題を生じる可能性が高い。

 

このような課題に対し、薬剤師は積極的に貢献できる職種である。

健康教育における支援には様々な選択肢があるが、日常のアクセスを考えたとき、もっとも身近で支援できるのは「かかりつけ薬剤師」だろう。

私は、「ヘルスリテラシーの支援の拠点」と「医療制度のコンサルタント機能」は、薬局が生き残っていくための重要なキーワードだと考えている。

TVの通販、週刊誌の薬の記事、ネットの健康サイトなどを見て、疑い、迷い、悩んでいる患者さんは非常に多い。

このような方への健康情報支援は、薬局の大きな差別化になるはずである。

 

本書は、ヘルスリテラシーの技能を習得するためのテキストではない。

初めから勉強する人のための、いわゆる「成書」である。

ヘルスリテラシーの定義、歴史、評価、内容、具体的な取り組みについて、わかりやすく解説している。

現時点(2017年8月現在)では、日本で唯一の総合解説書

※コミュニケーションを促進させ、ヘルスリテラシーを向上させる5つの方法(本書 P.144-150)

[1]質問や話し合いができる「場」の整備

[2]情報の伝え方、情報提供時の配慮

[3]理解の確認

[4]「家族」という資源を最大限に活用する

[5]患者の医療情報が各医療機関で共有されることの重要性を伝えると言ってよい。

 

私が一番勉強になった部分は、「第9章 医療機関におけるヘルスリテラシーに着目した取り組み」である。

この章で「コミュニケーションを促進させ、ヘルスリテラシーを向上させる5つの方法」は、服薬指導にも応用できる大変重要な内容であった。

 

本書を精読し、自分が働いている薬局でできることを考え、患者さんに話すための勉強をしていく。

患者さんの個々のリテラシーが向上するとともに、別のアイデアも浮かぶと思う。

たとえば、健康教室やセミナーなど、薬局主催の企画モノである。

その最良のテキストとして本書を推薦する。

きっと、薬の供給・説明を中心としたこれまでの薬剤師の業務の中で、これまでとは異なる「テーマ」「やりたいこと」が見つかるだろう。

 

 

 

「ヘルスリテラシー」健康教育の新しいキーワード

福田洋・江口泰正 編集

(大修館書店)

 

=目次=

第1章 ヘルスリテラシーとは

①リテラシーが示す内容の広がり

②ヘルスリテラシーの定義

③ヘルスケアにおけるヘルスリテラシー

④健康教育とヘルスプロモーションにおけるヘルスリテラシー

⑤「ヘルスリテラシーのある社会」に必要な能力

⑥ヘルスリテラシーの測定と要因、健康との関係

⑦世界におけるヘルスリテラシーへの取り組み

 

第2章 ヘルスリテラシーの歴史と広がり

①ヘルスリテラシー研究が誕生するまで

②ヘルスリテラシー研究の発展と概念の拡張

③ヘルスリテラシー研究の現在

④ヘルスリテラシー研究の今後に向けて

 

第3章 ヘルスリテラシーの評価法

①ヘルスリテラシーの評価の視点

②客観的評価ツール

③自己報告式の評価ツール

④主に一般市民を対象とした評価ツール:臨床から公衆衛生へ

⑤国際比較へ向けた評価と今後の展望

 

第4章 ヘルスリテラシーと健康教育

①「ヘルスリテラシー」をキーワードに進める健康教育

②「健康」と「教育」の意味の再確認

③ヘルスリテラシーの向上のために

④健康教育における様々な支援法

 

第5章 ヘルスリテラシーと情報

①ヘルスリテラシーと情報のかかわり

②ヘルスリテラシー問題の情報側からの解決アプローチ

③英語のリーダビリティおよび関連研究とヘルスリテラシー問題への応用

④日本語のリーダビリティおよび関連研究

⑤日本語における情報の適正化の実際と今後の展望

 

第6章 学校におけるヘルスリテラシーに着目した取り組み

①学校教育でのヘルスリテラシーの捉え方

②学校健康教育におけるヘルスリテラシーの位置づけ

③ヘルスリテラシーを育成する学校健康教育

④大学の専門教育(看護基礎教育)における取り組み

⑤看護学科2年次におけるヘルスリテラシー育成の教育実践例

 

第7章 職場におけるヘルスリテラシーに着目した取り組み

①はじめに

②職場でヘルスリテラシーが注目される理由

③職場でのヘルスリテラシー活用に向けた学びの蓄積

④職場でヘルスリテラシーを活用するために

⑤職場におけるヘルスリテラシーを活用した取り組みの実践例

 

第8章 地域におけるヘルスリテラシーに着目した取り組み

①地域における活動とヘルスリテラシー

②市民力を活かした健康づくりと健康教育

③話題を共有することによる健康教育

④ヘルスリテラシーの概念を取り入れた今後の展開

 

第9章 医療機関におけるヘルスリテラシーに着目した取り組み

①ヘルスリテラシーが「不十分」な人の見つけ方と医療スタッフ間での共有の実際

②コミュニケーションを促進させ、ヘルスリテラシーを向上させる5つの方法

③日本のプライマリ・ケアシステムの確立と国民レベルでのヘルスリテラシー向上へ

 

おわりに

さくいん

編著者紹介・著者紹介

 

 

以上

 

 

 

次章 >> 随時更新していきます。

 

 

 

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