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5 すご本
[すご本12 ヘルプマン!]
[すご本12 ヘルプマン!]第1~10巻
くさか里樹著
(講談社)
「ヘルプマン!」は、日本の高齢者介護をテーマとした漫画である。
2003年8月から2014年9月まで、講談社発行の『イブニング』にて連載され、その後2014年12月より朝日新聞出版発行の『週刊朝日』に移籍した。
(移籍後は、タイトルを「ヘルプマン!!」に変更した。)
2011年5月、第40回日本漫画家協会賞大賞を受賞している。
この本は、これから介護を勉強したい人、特に介護・福祉関連の方と連携をする医療関係者にオススメする。
私が「ヘルプマン!」を読んだきっかけは、ある認知症ケアの本に読むべき介護の本として推薦されていたからだ。
正直に言うと、漫画という先入観で、内容を軽く考えていた。
そこで、取りあえず第1~10巻だけ読んだのだが、内容に驚愕した。
怖いほど、リアルだったからだ。
内容は、二人の主人公の行動を通じ、高齢社会の問題点をわかりやすく描くものだが、介護現場で実際に起こっている現実と、そこで働く人たちの苦悩が非常にリアルなのである。
たとえば、認知症の患者さんの徘徊、排便の障害、入浴の拒否である。
介護や認知症の本では、「徘徊」「失禁」「弄便」などの言葉の意味は説明されている。
「これらの症状は、介護者に著しい負担を課す」とは、書かれている。
しかし、これだけでは、本当の姿はわからない。
ご家族の方がノイローゼになるほどの負担、家族に亀裂が生じるほどの苦労は、テキストには書かれていない。
それが、この漫画では、すごい迫力でわかりやすく描かれている。
私は、そのことを伝える最も良いテキストの形は「漫画」だと思う。
言葉では、その実態を-特に未経験者はイメージできない。
写真や動画では、プライバシーや放送コードの問題が生じるであろう。
介護の実態、現場の苦悩を伝える媒体として、「漫画」は最適だと思う。
もちろん、漫画の質にもよる。
話自体が読みにくい場合や取材がきちんとしていなければ、そもそも読む意味がない。
その点、「ヘルプマン!」は、安心して読めるテキストなのである。
介護に関しては、いろいろな職種の人が関連し、テーマや切り口も豊富である。
「ヘルプマン!」は、基本的にテーマごとにエピソードを構成し、完結させている。
私は、第1~10巻までしか読んでいないが、そのテーマを記しておく。
『ヘルプマン!』くさか里樹 講談社〈イブニングKC〉全27巻
介護保険制度編(第1巻)
在宅痴呆介護編(第2巻)
介護虐待編(第3巻)
高齢者性問題編(第4巻)
介護支援専門員編(第5~7巻)
ケアギバー編(第8巻)
介護福祉学生編(第9~10巻)
主人公の2人は理想に燃えて、自分の信念に従って行動している。
このような物語を読むと、現場で働いている人たちには、若干辛い内容もあるだろう。
「漫画だからできるんだよ!」「理想通りに事は運ばない」というような。
ちなみに、第13巻ではそのような、介護における「理想」と「現実」の問題にも言及していると聞いた。
是非、続編を読みたいと思う。
以上
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