[すご本11 認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション]


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 5  すご本 

[すご本11 認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション]

 

 

[すご本11 認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション]

野原幹司:編

山脇正永・小谷泰子・山根由紀子・石山寿子:著

(南山堂)2011年11月15日第一版第一刷

 

 

認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーションについて書かれた本である。

この本の対象は、認知症に取り組む医療関係者(特に医師・歯科医師、看護師、言語聴覚士)、介護関係者と考えられるが、一番役に立つのは認知症の患者の食事介助を実際にされている人である。

 

「序」にこの本を企画した経緯が書かれている。

認知症の臨床では摂食・嚥下の問題は避けては通れない。

しかしながら、認知症患者の嚥下リハビリテーションは参考となる成書は少なく、しかも、これまでの成書は回復期の脳血管障害を対象に書かれていたため、診察法や訓練が適用できなかったケースも多かった。

そこで、現場の経験と知識の集大成として、認知症の嚥下リハを体系づけた「使える知識」満載の本書が企画されたのである。

 

著者は、医師、歯科医師、看護師(摂食・嚥下障害看護認定看護師)、言語聴覚士であり、各職種の特性を活かした内容になっている。

 

本書は、「理論編」と「実践編」で構成されている。

「理論編」では基本となる知識と技法が整理され、「実践編」では現場でよく遭遇する症状・問題とその対応がまとめられている。

なお、「実践編」では摂取・嚥下に関する現場の実例を、看護師と言語聴覚士の2つのパターンで紹介している。

「理論編」の関連項目の部分とリンクさせてあるため、具体的な対応とその理由や根拠がすぐにわかるようになっている。

 

各章の詳しい内容は目次を参照していただきたいが、「理論編」と「実践編」の大まかな内容は以下の通りである。

<理論編>

1)認知症のケアについての基本的な考え方

2)認知症の基本的知識

3)嚥下機能の評価

4)嚥下の訓練

5)食事の支援

6)栄養へのアプローチ

7)リスク管理

8)胃瘻

9)終末期の対応

 

<実践編>

現場でよくある症状とその対応

 

「3)嚥下機能の評価」では、認知症のタイプ別の嚥下の特徴がまとめられている。

具体的には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症の4つのタイプについて、嚥下の特徴がまとめられているのだが、これが大変に勉強になった。

そもそも、認知症のタイプによって、嚥下に特徴があることを知らなかったからである。

また、認知症ではタイプ別の特徴に加えて、進行に伴う嚥下機能の低下を考慮しなければならないことも納得であった。

 

認知症の患者さんの食事介助をされている方には、「5)食事の支援」と「6)栄養へのアプローチ」の章が必須であろう。

もちろん、難易度が高い技法もあるが、ご自宅で食事の介助について工夫・改善できるヒントがたくさん掲載されている。

たとえば、生活リズムの乱れは食行動に大きく影響すること。

生活リズムを改善するための「昼間に日に当たること」「夜のテレビを付けっぱなしにしない」などの工夫は、直接的な食事介助の工夫ではないのだが非常に重要な考え方だと思う。

 

他の嚥下に関する医学書には、あまり載っていない「8)胃瘻」と「9)終末期」については、医療関係者は必ず読んでおきたい。

私も、患者さんのご家族から胃瘻についての相談をいただいたことがあるが、自分や家族の問題としても勉強しておきたいテーマである。

 

薬剤師として大変勉強になったのは、以下の内容である。

<生体のリズムを乱す薬剤>

<嚥下機能を低下させる薬剤>

<嚥下障害に対する有効性が示されている薬剤>※咳嗽反射を改善する薬剤

<薬剤の副作用による食欲低下の可能性>

<口腔内に薬が残っていないかの確認が重要>

<水の服用が難しいときは、ゼリーで服用する>

<簡易懸濁法>

<経腸栄養剤と栄養補助食品>

<抗パーキンソン病薬を服用している場合は、服用後の方が食欲が増す場合が多い>

 

私は、認知症の服薬状況を悪化させる要因のひとつとして「嚥下障害」があると考え、認知症の嚥下障害の勉強をするために本書を手に取った。

もちろん、服用上の問題としての「嚥下障害」は勉強できたのだが、「食べるということ」を通して認知症のケアを考えることができたことが最も大きな収穫であった。患者さんにとって、「食べること」は最大の楽しみであり、大切なコミュニケーションの時間であり、なにより「生きること」に他ならないことが今さらながら理解できたのである。

 

 

 

「認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション」

野原幹司:編

山脇正永・小谷泰子・山根由紀子・石山寿子:著

(南山堂)

 

=目次(中見出しまでを記載)=

 

<理論編> -嚥下臨床に必須の知識と技術-

1章 摂食・嚥下リハビリテーション

 Ⅰ キュアからケアへ

 Ⅱ 回復期と慢性期の嚥下リハ

 Ⅲ 認知症の嚥下リハ-訓練から支援へのパラダイムシフト

 Ⅳ 最適な認知症の嚥下リハを行うために

 

2章 認知症総論

 Ⅰ 認知症とは-認知症の概念と定義

 Ⅱ 認知症の疫学

 Ⅲ 認知症の種類

 Ⅳ 中核症状と周辺症状-認知症の特徴と対応・ケア

 Ⅴ 認知症のスクリーニング、重症度

 Ⅵ 認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーションへ

 

3章 嚥下機能評価のポイント

 Ⅰ 認知症と嚥下

 Ⅱ 問診

 Ⅲ 身体所見採取

 Ⅳ 食事時の観察ポイント

 Ⅴ 嚥下内視鏡検査

 

4章 嚥下訓練

 Ⅰ 間接訓練

 Ⅱ 呼吸理学療法

 

5章 食事支援

 Ⅰ 直接訓練と食事支援

 Ⅱ 認知症と食事

 Ⅲ 理想と現実のバランス

 

6章 栄養へのアプローチ

 Ⅰ 認知症の発症と栄養

 Ⅱ 高齢者の低栄養

 Ⅲ 低栄養による弊害

 Ⅳ 栄養状態の評価

 Ⅴ 低栄養に対するアプローチの実際

 Ⅵ 柔軟な多方面からのアプローチ

 

7章 リスク管理

 Ⅰ 窒息のリスク管理

 Ⅱ 誤嚥のリスク管理

 

8章 胃瘻

 Ⅰ 認知症における胃瘻

 Ⅱ 胃瘻の適応と実際

 

9章 終末期の対応

 Ⅰ 認知症の終末期

 Ⅱ いつまで経口摂取を続けるか

 Ⅲ 認知症終末期における経口摂取の重要性

 Ⅳ ケアとしての嚥下リハ

 Ⅴ 嚥下機能のソフトランディング

 

<実践編> よくある症状とその対応

1)嚥下訓練をしてくれない

2)指示しても咳ができない

3)呼吸が浅い、指示しても深呼吸ができない

4)食事時に意識レベルが低い

5)食事を認識しない

6)食べない

7)食べるペースが早い

8)食べこぼしが多い

9)食べるのが遅い、食事に時間がない

10)うまくスプーン、食器が持てない

11)食事中、食事後に呼吸が乱れる

12)食べ物を飲み込まない、口にためたままにする

13)食事のとき口を開けない

14)食べ物を口から出す

15)食事を残す

16)食事中にむせる

17)とろみ剤、ペースト食を嫌がる

18)咬まない、丸飲み

19)義歯を嫌がって入れない、義歯を出してしまう

20)食後にのどがゴロゴロ鳴る

21)窒息した

22)(不顕性)誤嚥をしているといわれた

23)痩せてきた

24)好き嫌いが多い

25)原因不明の発熱がある、ときどき微熱がある

26)異食がある

27)飲み込んだ食べ物、胃瘻から入れた食べ物が口に戻ってくる

28)胃瘻をしているが食べたい・食べさせたい

29)肺炎をくり返す

30)どうしても誤嚥してしまう

 

索引

 

 

以上

 

 

 

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