[薬剤師が知っておくべきこと2 海外旅行と医薬品]


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 4  薬剤師が知っておくべきこと 

[薬剤師が知っておくべきこと2 海外旅行と医薬品]

 

 

[海外旅行と医薬品]

今回は、患者さんの海外渡航時に携帯する医薬品に関して注意するべきことを考察する。

 

あなたは、患者さんから海外旅行に行くときに、携帯する薬について相談された経験がないだろうか?

私は、1年に1度ほどの頻度で相談を受けていた。

その中には、フルニトラゼパムが処方されていた患者さんが米国に旅行するケースや登山のためにダイアモックスが処方されるケースがあった。

そのたびに、貴重な勉強をさせていただいた。

このコンテンツは、それををまとめたものである。

日本は、年間1700万人近くが海外旅行をしている。

あなたのアドバイスで、患者さんの楽しい旅行をトラブルから守ることができるのである。

 

 

 

[患者さんに確認するべき点]

まず、患者さんから海外旅行に行くときに、携帯する薬について相談された場合に確認する点を挙げる。

 

・海外旅行の予定を確認する。

薬剤によっては、海外に持っていくための手続きが必要なため。

たとえば、医療用麻薬の場合、当該地方厚生局に申請する必要があるのだが、許可証をもらうまで最低2週間はかかる。

 

・渡航先の滞在日数を確認する。

医薬品によっては、滞在日数が1ヶ月分を超えると手続きが必要になる場合があるため。。

 

・渡航する国を確認する。

旅行先の国の法律により薬の規制や手続きが異なる。従って、あらかじめ旅行先の在日大使館に問い合わせる必要があるため。

 

・処方内容を確認する。

医療用麻薬、向精神薬、自己注射の薬剤などは、手続きが必要なため。

 

※数量にかかわらず、持ち出せない薬剤も存在する。(後述する。)

 

・まとめ

医薬品を日本より海外に持ち出す場合、日本の法律による規制と渡航先の国の法律による規制の両方を確認しなければならない。

(ちなみに東南アジアでは、麻薬などの禁止薬物についての刑罰が非常に重いために慎重に確認すること。)

 

 

 

[注意するべき薬剤]

旅行する患者さんの処方内容を確認したときに、どのような薬剤に注意したらよいのかを考える。

「持ち出すのに手続きが必要な薬剤」「持ち出し禁止の薬剤」に分けて説明する。

基本的には、処方せんによる薬剤は、用法用量からみて1ヶ月分以内が携帯可能である。

(外用剤の場合は、標準サイズで1品目24個以内。)

市販薬、医薬部外品は用法用量からみて2ヶ月分以内である。

 

 

◇手続きが必要な薬剤

①医療用麻薬

②向精神薬

③注射剤(インシュリン、インターフェロンなど)

 

①医療用麻薬

麻薬は、本来は厚生労働大臣より許可を受けた「麻薬輸入・輸出業者」でなければ、取扱うことはできない。

ただし、自己の疾病の治療のために麻薬を使用している人が出入国する場合には、例外規定を設けている。

つまり、海外に携帯できるのだが、事前に地方厚生局の許可が必要である。

申請から許可書をもらうまでには、最低2週間はかかると思った方がよい。できるだけ、早めに問い合わせて手続するようにアドバイスする。

 

(ご参考)

申請手続きに必要な書類

・医師の診断書1部

 申請者(患者)の氏名、住所、麻薬の施用を必要とする理由、1日あたりの麻薬処方量を記載した診断書。

・麻薬携帯輸入許可申請書

 日本に医療用麻薬を携帯して入国する場合に必要。

・麻薬携帯輸出許可申請書

 日本から医療用麻薬を携帯して出国する場合に必要。

 

※これらの許可申請手続きについては、厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部にアクセスすると詳細な情報が入手可能である。

(1)麻薬等の携帯輸出入について [PDF] → 届出用紙 [Word]

 携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き

 http://www.nco.go.jp/dl_data/keitai/keitai_tebikih26.pdf

 この手引きを見ると、医療用麻薬の携帯に関する手続きがすべてわかる。

 

 

②向精神薬

向精神薬の場合、携帯する量によって規制されている。

第1種から第3種まで薬剤によって量が決められており、その量を超えた場合に書類による手続きが必要になる。

たとえば、アルプラゾラムでは72㎎以下であれば手続が不要、72㎎を超える場合に書類が必要になる。

ここでの書類とは、向精神薬を携帯して輸入または輸出することが、自己の疾病の治療のために必要であることを証するものである。

たとえば、「処方せんの写し」「患者の氏名及び住所並びに携帯を必要とする向精神薬の品名(と成分名)

及び数量を記載した医師の証明書」のこと。

 

なお、向精神薬のリストと規制の総量は改訂されるため、必要があるたびに確認しなければならない。

 

 

③注射剤(インシュリン、インターフェロンなど)

飛行機内に持ち込む際、医師による薬剤証明書(英文)が必要である。

海外の多くは、手荷物検査で注射器が見つかった場合、医師による証明書がないと没収される。

最悪の場合、疑いが晴れるまで留置される場合もあるため、必ず用意しておきたい。

 

 

 

◆持ち出し禁止薬剤

これらの薬剤は、理由や数量にかかわらず、海外に持ち出すことはできない。

・覚せい剤

・覚せい剤原料

・ヘロイン

・あへん末

・メサドン

・大麻

 

 

 

[英文薬剤証明書、英文診断書]

日本から薬剤を持ち出す場合、薬剤の種類や量によっては、手続きが全く必要ない場合がある。

この場合でも、英文による薬剤証明書(または診断書)を持っていく方が良い。

海外で思わぬトラブルに巻き込まれないようにするためである。

証明書については、公的に規定された形式はない。

しかし、この証明書は、主治医の氏名、住所、連絡方法とサインがあったほうが良いため、医師に依頼するのが基本であろう。

 

規定の形式はないのだが、次の項目が必要だといわれている。

・患者氏名、住所、連絡先、パスポートナンバー

・疾患名

・薬剤名(一般名)

・薬の剤形、含有量、数量

・医師名・病院名および住所、電話番号(できれば医師本人のサイン)

 

※患者さんの血液型、薬物アレルギーの有無を記載されることもあり。

(治療している病気によるが、緊急時の対応を考えてのことである。)

 

ちなみに「日本旅行医学会」のホームページには「認定医一覧」が掲載されており、英文診断書を作成いただける医師が確認できる。

地域別になっており、自分の近くの医療機関が検索可能である。

 

また、診断書、薬剤証明書・各種証明書の医師による医療翻訳の会社もある。

オブベース・メディカCorp.

※内容にもよるが6000円~8000円ぐらいの費用がかかる。

 

医師による英文の薬剤証明書・診断書のほかに、薬自体の説明書を患者さんから希望される場合がある。

この場合、英語版「くすりのしおり」が役立つ。

くすりの適正使用協議会から入手できる「患者さん向けの英語版服薬説明書」である。

海外に渡航する患者さんの他、外国人の患者さんへの説明にも活用できるので大変便利である。

 

くすりの適正使用協議会

「くすりのしおり」で該当の医薬品を検索する。そのページの左上に「英語版」ボタンをクリックする。

※英語版がない薬剤もある。

 

英文の薬剤証明書や診断書は、トラブル回避のためのお守りである。

海外旅行に行かれる患者さんには、是非、アドバイスを心掛けたい。

 

(ご参考)

「日本旅行医学会」の「認定医一覧」について

英文診断書の作成について紹介したが、以下の項目についての可否も確認できる。

登山、ダイビング目的の渡航についての相談についても参考になるであろう。

 

=確認できる項目=

・留学・赴任予防接種

・高山病薬ダイアモックス処方

・エピペンの処方

・ダイビングの相談

・英語で診察

・英文診断書の作成

・旅行前の相談

・帰国後の診察 備考

 

 

 

[患者さんが旅行する国の法が問題]

国によって法律が異なり、当然、薬の規制も異なる。

たとえば、アメリカでは、フルニトラゼパム製剤の持込みは一切禁止されている。

これは、アメリカではこの成分が麻薬指定されているためである。

日本では、フルニトラゼパムは、普通に処方される睡眠導入剤である。

このように、国によって規制が異なるため、渡航先の国の規制を確かめるのは大変重要なことなのだ。

一般的には入国先の在日外国公館に確認するのが、もっとも確実といわれている。

 

国によって規制が異なると書いたが、麻薬が法律で認められている国はない。

注射器や白い粉薬を携帯している場合、医師の証明書を持っていることが誤解を防ぐことになる。

海外旅行に薬を携帯するときに英文の薬剤証明書を用意することは、グローバルスタンダードなのである。

この他、錠剤・カプセルはできるだけ薬袋やヒートシールのままで持っていく。

医師による診断書のほかに、薬の英文説明書も併せて持っていくとさらに安全である。

これは、日本でしか発売されていない薬があるためだ。

 

宗教紛争やテロの影響で、非常に厳しくチェックする国も増えている。

せっかくの楽しい旅行を、誤解やトラブルに巻き込まれないように患者さんにアドバイスしよう。

 

 

 

[絶対に役立つサイト・資料]

◆厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部

許可申請手続き

(1) 麻薬等の携帯輸出入について [PDF] → 届出用紙 [Word]

携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き

http://www.nco.go.jp/dl_data/keitai/keitai_tebikih26.pdf

この手引きを見ると、医療用麻薬の携帯に関する手続きがすべてわかる。

また、規制されている向精神薬とその総量のリストも掲載されている。

 

 

・地方厚生(支)局名管轄地域麻薬取締部の連絡先

 

北海道厚生局北海道

〒060-0808

札幌市北区北八条西2-1-1

Tel:011-726-3131 Fax:011-709-8063

 

東北厚生局(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)

〒980-0014

仙台市青葉区本町3-2-23

Tel:022-221-3701 Fax:022-221-3713

 

関東信越厚生局(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、新潟県)

〒102-8309

東京都千代田区九段南1-2-1

Tel:03-3512-8691 Fax:03-3512-8689

 

東海北陸厚生局(静岡県、愛知県、三重県、岐阜県、富山県、石川県)

〒460-0001

名古屋市中区三の丸2-5-1

Tel:052-951-0688 Fax:052-951-6876

 

近畿厚生局(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)

〒540-0008

大阪市中央区大手前4-1-76

Tel:06-6949-6336 Fax:06-6949-6339

 

中国四国厚生局(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)

〒730-0012

広島市中区上八丁堀6-30

Tel:082-227-9011 Fax:082-227-9174

 

四国厚生支局(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)

〒760-0019

高松市サンポート3-33

Tel:087-811-8910 Fax:087-823-8810

 

九州厚生局(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)

〒812-0013

福岡市博多区博多駅東2-10-7

Tel:092-472-2331 Fax:092-451-4539

 

 

◆外務省

在日外国公館リスト

http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/emblist/

 

在外公館リスト

http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/zaigai/list/index.html

 

海外安全対策

http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html

日本の公館がある国の医療事情が把握できる。

国によっては、日本語がわかる医療機関が掲載されている場合がある。

 

 

◆日旅行医学会本

認定医一覧

http://jstm.gr.jp/summary/

近隣で、英文の診断書作成や予防接種などに対応してくれる医師のリスト。

 

Mebio掲載記事

「ミッドナイト・エクスプレス 薬剤証明書の旅行医学」 2001/4

http://jstm.gr.jp/mebio200104.pdf

アメリカを例に薬剤証明書の重要性を解説した記事。

 

 

◆くすりの適正使用協議会

くすりのしおり

http://www.rad-ar.or.jp/siori/

英語版の薬の説明書が入手できるサイト。

(ただし、英語版がない薬剤もある。)

 

 

以上

 

 

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[薬剤師が知っておくべきこと5 流通管理品目]

 

 

 

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