4 薬剤師が知っておくべきこと
[薬剤師が知っておくべきこと1 副作用被害救済制度]
[はじめに]
このシリーズは、薬局の業務において必須でありながら、めったに必要にならない情報を考察する。
薬局によっては、一度も使わないかもしれない。
しかし、薬剤師としては、知っておくべき情報である。
このような情報の種類は多くはないが、日常の業務で頻繁には使われないために忘れがちになる。
復習を兼ねて、確認してほしい。
第1弾は、「医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度」である。
[医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度]
「医薬品副作用被害救済制度」は、医薬品の副作用の健康被害に対する救済を目的とした公的制度である。
同じように生物由来製品における健康被害の救済を目的としているのが、「生物由来製品感染等被害制度」である。
具体的には、健康被害者が請求手続きを行い、厚労省の判定に基づき、給付を受ける制度である。
一般の方でこの制度を知る人はほとんどいないため、医療関係者は「制度自体の説明」「手続きの方法」などを説明できるようにしておく必要がある。
万一、患者さんが健康被害者になった場合に、この制度を知っていることは、大変大きなメリットである。
手続きと給付の流れを図に示す。
[救済給付の流れ]
[請求方法]
給付の請求は、副作用や感染等によって健康被害を受けたご本人やそのご遺族など、給付を受けようとする方が直接行う。
給付を受けるには、「自分が病気であり、薬が適正に使用されたこと」と「その健康被害が薬を使用したことが原因であること」の2つを証明する必要がある。そのため、下記の書類が必要となる。
・医師の診断書
・投薬証明書
・医薬品を購入した場合は販売証明書
・受診証明書
など
これらの所定の用紙は、「医薬品医療機器総合機構」から入手可能である。
ホームページよりダウンロードできるほか、請求に応じて無料で送付されている。
[問い合わせ先]
独立行政法人 医薬品医療機器機構 (PMDA)
(救済制度相談窓口)
電話番号:0120-149-931(フリーダイアル)
受付時間:月~金 9:00~17:30(祝日・年末年始を除く)
Eメール:kyufu@pmda.go.jp
ホームページ:http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai.html
[給付の種類]
・医療費:医薬品等の副作用などによる疾病の治療に必要な費用に対する給付。
・医療手当:医薬品等の副作用などによる疾病の治療に伴う医療費以外の費用に対する給付。
・障害年金:医薬品等の副作用などにより一定の障害の状態にある18歳以上の者に生活補償等を目的とする給付。
・障害児育児年金:医薬品等の副作用などにより一定の障害の状態にある18歳未満の児童を養育する者に対する給付。
※障害の程度は、1級および2級に区分されており、支給額が異なる。
1級の障害:日常生活の用を自分ですることができない程度の障害(他人の介助を受けなければ生活できない程度の障害)
2級の障害:日常生活に著しい制限を受けるか、著しい制限を加えなければならない程度の障害。
・遺族年金:一家の生計維持者が医薬品等の副作用などにより死亡した場合に、その者の遺族が生活していくための給付。
・遺族一時金:一家の生計維持者が医薬品等の副作用などにより死亡した場合に、その者の遺族に対する見舞を目的とした給付。
※給付請求者は、副作用などにより死亡した人(生計維持者)と同一生計にあった遺族のうち最優先順位の人
優先順位は、①配偶者→②子→③父母→④孫→⑤祖父母→兄弟姉妹
・葬祭料:医薬品等の副作用により死亡した人の葬祭に対する給付。
[給付の対象とならない場合]
これまでに不支給の決定がなされたケースを紹介する。
・法定予防接種を受けたことによるものである場合。(この場合は「予防接種健康被害救済制度」が適用になる。)
ただし、任意に予防接種を受けた場合は対象となる。
・製造販売業者など、他に損害賠償の責任を有する者が明らかな場合。
・救命のため、やむを得ず通常の使用量を超えて使用したことによる健康被害で、その発生があらかじめ認識されていた場合。
・不適正な目的や方法などにより健康被害が発生した場合。
・対象除外医薬品による健康被害の場合。
→厚生労働大臣が対象除外医薬品として指定する医薬品で、抗がん剤、免疫抑制剤など特殊疾病に使用される医薬品。
→人体に直接使用しないもの、薬理作用のないもの。殺虫剤、殺菌消毒剤、体外診断薬など副作用被害発現の可能性が考えられない医薬品。
・軽度な健康被害や請求期限を経過した場合。
もっとも頻度が高い不支給の理由は、「因果関係なし」である。
また、「不適正目的または不適正使用」の判定は、添付文章に基づく。
(当たり前だが、添付文章の内容は厚生労働省が承認しているため。)
[注意するポイント]
・医薬品または生物由来製品は適正に使用されていなければならない。
・請求手続きは、健康被害を受けたご本人またはご遺族等、給付を受けようとする方が、直接行う。
・救済給付の決定に不服がある場合、厚生労働大臣に対し、審査審査申し立てをすることができる。
・医薬品医療機器総合機構(PMDA)には、制度をまとめた小冊子、リーフレットなどが用意されている。
以上、制度の概要を説明した。
副作用に苦しむ患者さんやそのご家族のための大変優れた制度であるのだが、認知率は非常に低い。
あなたは、これらの方々の力になることができるのである。
次章 >> [薬剤師が知っておくべきこと2 海外旅行と医薬品]
4 薬剤師が知っておくべきこと ナビゲーション
[薬剤師が知っておくべきこと1 副作用被害救済制度] ←今ココ
↓ もし良かったら、この記事をシェアしていただけると嬉しいです。