[第8章 コーチング]


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 3  コミュニケーション 

[第8章 コーチング]

 

 

コーチングとは「会話によって、相手の優れた能力を引き出しながら、その人の前進をサポートし、自発的に行動することを促すコミュニケーションスキル」である。

カウンセリング、心理学、行動科学、リーダーシップ論などの要素が統合されたものと言われている。

現在、書籍やインターネットでは、コーチングに関する情報が豊富にあり、優れた資料も多い。

ここでは、私なりに理解した内容、薬剤師としてコミュニケーションに役に立った内容を紹介する。

コーチングの体系的な内容や本格的な知識ではない。

ちなみにここに述べるテクニックは、患者さんとのコミュニケーションのほかに薬局のスタッフとのミーティングなどにも活用した。

 

コーチングにおいて、コーチとクライアントすなわち医療従事者と患者さんの信頼関係は、非常に重要である。

この信頼関係を「ラポール」というが、構築するポイントは3点ある。

 

・ペーシング

相手のペースに合わせること。合わせるのは、「話のスピード」、「声の高さ」、「呼吸のペース」などである。

 

・ミラーリング

相手の状況、話の内容に合わせて、自分の表情や姿勢を相手と同じようにすること。

 

・バットトラッキング

「言葉のオウム返し」のこと。

相手の話の中で、伝えたいキーワードで返答することである。

ポイントは、相手が重要だと考えている言葉を繰り返すこと。

 

 

コーチングを行うときは、環境設定も大切である。

・理想的には、静かで落ち着いて話せる場所と時間がよい。(薬局では、難しいと思うが。)

・位置関係は、対面を避けて、90度もしくはハの字の位置に設定する。

・距離は、70㎝~150㎝。

人にはパーソナルスペースという「自分を守りたい」距離がある。(いわゆる、個人的な「縄張り」)

いきなり、このパーソナルスペースを破られると、緊張や警戒をするので、この距離を侵さないこと。

70~150㎝と幅があるのは、人によってパーソナルスペースの距離が異なるからである。

・目の高さをあわせる。

相手の目の高さに合わせて、しっかりと相手の目をみること。
(ただし、あまり長い時間見るのはよくない。)

 

 

コーチングのスキルは、「傾聴」「承認」「質問」「提案」の4つの基本があるが、もっとも基本となるのは「傾聴」である。

 

・「傾聴」

薬剤師に傾聴の重要性を改めて説明する必要はないと思うが、傾聴のコツがあるのは確かである。

私が重要なコツだと思ったことは以下の4点である。

 

・相手の話を遮らない。

・うなづく。

・相手の話を要約して重要な内容を確認する。

・相手に共感する。

3傾聴

 

・「承認」

相手の存在を肯定的に認めることである。

人は、承認されることで自信をつけたり、やる気が出たりする。

承認は「Iメッセージ」という伝え方がある。

これは、「私はこう思う。」「私はこう感じた。」の形にする伝え方である。

例えば、ルールを守らない人に対して「あなたはルールを守らないといけませんよ。」と伝えるのではなく、「私は、あなたがルールをキチンと守ってくれるとうれしいです。」と伝える。

相手の行動を変えるには、相手の話をよく聴き、相手を認めることが必要なのである。

この他、患者さんのよい部分をみつけて、「すばらしい。」「素敵です。」「本当にすごいです。」などを言葉で承認するのも大変効果的である。

 

・「質問」

質問には、「閉じた質問」(クローズドクエスチョン)「開いた質問」(オープンクエスチョン)がある。

「閉じた質問」とは、いわゆるイエス・ノーで答えられる質問である。

例:「あなたは、カレーが好きですか?」

これに対して「開いた質問」は、考えた上で答える質問である。

例:「あなたは、どのようなカレーが好きですか?」

薬剤師のコミュニケーションについての本や記事の多くには、「開いた質問」が重要であると書かれている。

患者さんの本音や考えを知るには、「閉じた質問」より有用性が高いからだ。

もちろん、コーチングにおいても大切なテクニックとして説明されている。

これに対して反論はないが、私は「開いた質問」を使用するときに注意が必要だと考えている。

まず、患者さんと自分の間に信頼関係がないときは、効果的な返答が得られない場合が多い。

また、「長時間待たされた患者さん」「時間がなく、急いでいる患者さん」には注意すべきである。

患者さんの個人的な性格も考慮した方がよいと思う。

 

「否定質問」「肯定質問」も覚えておいて損はない。

「否定質問」は、「なぜ、できないのか?」と聞く形の質問である。

これに対して、「肯定質問」は「○○ならできそうですか?」と形を変えるのである。

当然、後者の質問の方が建設的あるいは前向きに聞こえるだろう。

「否定質問」は、詰問に聞こえて、不快に感じるのである。

まったく同じ質問でも、肯定的に聞くことで、相手の印象が変わり、行動が前向きになることがあるのだ。

 

・「提案」

コーチングとは、クライアントの力を引き出すためのスキルなので、安易な提案はするべきではないと思っている。

しかし、医療の場合では患者さんに十分な知識や経験がなく、誤った方向へ向かう場合もある。

このような場合には、正しい知識や方向性を示すことも必要である。

相手の話を十分に聴き、相手の視野や考えを広めるための提案をするべきである。

患者さんには、「指示・命令」ではなく、「ひとつ提案させていただいていいですか?」と許可を得て行うのがポイントである。

 

 

私の業務にヒントになったことをピックアップして記述した。

この記事で興味を持たれたら、体系的な書籍を読まれるとよいと思う。

 

私は、人間関係の構築において、テクニックは最優先ではないと考えている。

あくまでも、その人の人品骨柄の方が重要だと思っているのだ。

しかし、モノの言い方、ちょっとした態度で人の印象が変わることも多く経験している。

これらのことに注意することは、有意義だと思う。

 

人の話をよく聴き、話し方を考えることで、患者さんとの信頼関係は強固になる。

それは、コミュニケーションの土台であり、基礎である。

あなたのコミュニケーション・スキルを向上させるヒントになれば幸いである。

 

以上

 

 

 

3 コミュニケーション ナビゲーション

[第1章 はじめに・目次]

[第2章 わかりやすい説明が必要な理由]

[第3章 医療用語]

[第4章 わかりやすくする工夫]

[第5章 高齢の患者さんへの説明]

[第6章 説明の工夫]

[第7章 非言語行動]

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