[第6章 説明の工夫]


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 3  コミュニケーション 

[第6章 説明の工夫]

 

 

この章では、説明をわかりやすくするための具体的な工夫や補強材料を紹介する。

ほとんどの薬局では、すでに活用されているものも多いだろう。

自分の説明の見直しや確認の意味で一読いただければと思う。

 

①説明を補強する資料を使う。

重要な情報をまとめた資料(紙媒体)があれば、積極的に使用する。

たとえば、吸入器の手技の説明書である。

この場合は、この資料を患者さんに見せながら説明する。

説明した部分がどこなのかを示すと効果的である。

患者さん用の資料は、製薬企業から入手できることが多く、ほとんどのメーカーがホームページで紹介している。

特にハイリスク薬については、どのような資料が使用できるかを確認するべきである。

資料の内容によっては、「困ったときの対応方法」の回答になることも多い。

 

 

②色で印象を強くする。

ここで私のエピソードを紹介する。

薬剤師になりたてのころ、患者さんからTELをいただいた。

内容は、「塗り薬が1種類足りない。」とのことであった。

その患者さんには、ヒルドイドソフトとマイザー軟膏が混合して出されていた。

患者さんは、薬剤情報を見て、塗り薬が2種類あると思ったのだ。

もちろん、2つの薬は混合されて軟膏容器に入れてあることは口頭で説明した。

しかし、患者さんは家に帰ってから薬剤情報を見て不安になったのだ。

私は、この件以降、混合してある薬は薬剤情報に蛍光ペンで分かりやすく囲むことにした。

つまり、家に帰ってから患者さん自身で確認できるようにしたのだ。

 

色を使うことで、大切な情報を強調したり、分類をわかりやすくすることができる。

うちの薬局では、一包化の袋に線を引いて、識別しやすくしている。

例:朝食後→赤、昼食後→橙、夕食後→青、就寝前→黒、で統一。

薬袋には、同じ色でー赤字で「朝」、青字で「夕」と記入している。

3薬袋例

もちろん、朝食後が赤、夕食後が青であることが患者さんにわかるようにである。

重要なのは、色を統一することである。

常に同じ色が同じ意味を持つことが決まっていれば、調剤や説明の間違いも少なくなるからである。

 

 

③図表を使う。

図表もわかりやすく説明するための工夫の1つである。

たとえば、「食間」の説明である。

漢方薬の使用比率が多くなるに従い、「食間」の説明が問題になった。

まれに「食事と食事の間」ではなく、「食事の最中」と解釈する患者さんがいるのである。

そこで、説明用の図を用意した。

食事と用法の相関図により、「食間」「食直前」などが説明しやすくなり、飲み間違いが減少したのである。

3食間

 

 

④実物を見せる。

患者さんに実物をお見せすることは、初めて処方された薬の説明において重要である。

また、薬を変更する場合、新旧の実薬により確認いただく。

変更になった新しい薬を認識いただく目的だが、いままで飲んでいた薬が残っていないかを確認するためである。

吸入器を初めて説明する場合は、口頭で説明するよりデモ器を使用する方がはるかに分かりやすい。

 

また、初めて一包化をご提案するとき(あるいは説明するとき)には、患者さんやご家族に見本を見せて説明する。

実物を見て一包化のご了解をいただくことと、用意に時間がかかることを理解いただくためである。

(私の薬局では、薬を渡す順番が変わることがあるため、必ず説明していた。)

薬の悩み(特に服用に関する)の解決方法の提案としても示しやすい。

 

※この一包化の見本は期限が切れた薬で作るとよい。

 

 

⑤その他

・視覚障がいの患者さん

日本の視覚障がい者の数は、約31万人。

そのうち、点字が使える方は約1割である。

ほとんどの視覚障がいの患者さんはこれまで、薬の説明を薬剤師等から口頭でされるだけであった。

説明内容を自分で確かめる方法がないため、大変なご苦労をされていたのである。

 

しかし、現在では「音声コード」を活用するという選択肢がある。

ワードの文書を音声コードに変換し、印刷文書に添付する。

このコード部分を専用の読み取り機に読み取らせると音声で読み上げるシステムである。

このシステムでは、薬局側にワード文書に音声コードを添付するソフトを用意すること。

また、患者側に専用読み取り機(活字文書読み上げ装置)を用意する必要がある。

この読み取り機は、障害者自立支援法によって日常生活用具に指定されており、自治体への申請により給付を受けることができる。

(価格は約10万円、個人の負担は所得等による応能負担だが、原則1割負担である。)

また、ワードに音声コードを添付するソフトは約8000円。

日本視覚障がい情報普及支援協会(JAVIS)のホームページで詳しく紹介されており、システムの導入に関するサポートもしているという。

残念ながら、私は経験がないが、視覚障がいの患者さんに薬学的管理が特に複雑な薬剤が処方された場合は、問題解決の選択肢になると思う。

 

 

⑥不十分な説明を変える&繰り返し説明する。

たとえば、お薬手帳である。

非常に恥ずかしいことだが、私はかなり長い期間、わかりやすい説明をしていなかったのである。
 
「これは、あなたの薬を記録する手帳です。お薬の相互作用や重複を確認するためのものです。あなたが安心してお薬をのむために、いつも持参してください。旅行時や災害時にも大変役に立ちます。」

具体的には、上記のような説明をしていた。

かなり、多くの患者さんに説明したので、「うちの薬局は、ていねいな説明をする親切な薬局だ。」と内心思っていた。

しかし、お薬手帳の定着率は上がらず、活用方法に問題がある患者さんも減らない。

どうして、お薬手帳がうまく活用されないのか?

私の説明が悪かったのである。

目的しか話していなかったのだ。特に高齢者の患者さんには上記の説明では不十分である。

お薬手帳は、患者さんが医師または薬剤師に渡して内容を確認して初めて役に立つ。

そのためには、すべての医療機関に持参いただくことを説明しないといけなかったのだ。

その後、いろいろな患者さんと話して、次のように誤解をしている人が多数いることが判明した。

 

・「同じ薬が処方されていたら、医療関係者にお薬手帳を見せる必要がない。」

・「薬が出ない病院・医院ー例えば歯科・眼科ーは、お薬手帳を見せる必要がない。」

・「その薬局でもらったお薬手帳は、その薬局だけで使う。」

 

これらのことを念頭に、説明を変えた。

高齢の患者さんには何度も説明する。

もちろん「相互作用」や「重複」という言葉は、使わない。

現在では、わかりやすい説明はもちろん、手帳の中身に記載の不備があった場合は、患者さんに了解をいただき記入するようにしている。

お薬手帳の患者さん情報を補完しながら、ついでに薬歴の情報も入手する。

患者さんの氏名、副作用歴(確定したもの)などを記入しながら、他院他科の受診状況をついでに確認する。

これらの工夫により、お薬手帳の理解と定着率は改善されたことは言うまでもない。

 

 

以上、わかりやすく説明するための具体的な工夫を紹介した。

次章からは、患者さんと信頼関係を築くためのコミュニケーションのテクニックを考察する。

第7章は、「非言語行動」である。

 

 

次章 >> [第7章 非言語行動]

 

 

 

3 コミュニケーション ナビゲーション

[第1章 はじめに・目次]

[第2章 わかりやすい説明が必要な理由]

[第3章 医療用語]

[第4章 わかりやすくする工夫]

[第5章 高齢の患者さんへの説明]

[第6章 説明の工夫] ←今ココ

[第7章 非言語行動]

[第8章 コーチング]

 

 

 

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