前章 >> [第2章 わかりやすい説明が必要な理由]
3 コミュニケーション
[第3章 医療用語]
私が薬剤師になったときに、先輩の薬剤師に教えられたのは「中学生が理解できるように説明する」ことであった。
このアドバイスは、私自身の説明時の基本方針になり、原則になった。
中学生が理解できる「わかりやすい説明」を考えたときに、第一に問題となるのは「専門用語」であろう。
病気や薬の説明において、医療用語は非常に多く出てくるからである。
わかりやすい説明の第一歩は、専門用語を普通の言葉に置き換えることである。
「中学生が理解できるように説明すること」と述べたが、中学生はどのくらい医療用語を理解しているのであろうか?
服薬指導に使われる用語に対する理解度を調べた報告を紹介しよう。
(参考文献)
「服薬指導用語に対する中学生・医療系学生の理解度」 祝部ら 医療薬学 Vol.29,No4(2003)517-522
服薬指導に使われる医療用語の理解度を中学生と医療系学生で調査した報告である。
中学生の結果を紹介しよう。
対象は中学三年生(有効回答数322人)で、「食前」や「OTC薬」などの24個の用語の理解度を調べた。
結果は、平均正解数わずか3.2問(/20問中)※であった。
※この調査の用語の設問は、過去の実施された調査ー朝倉らが1996年に行った「服薬指導用語に対する患者および中学生の理解度」を基にしている。
朝倉らの調査は、設問を20項目で実施しており、今回の調査は、これに「薬歴」「ジェネリック医薬品」など4項目を追加した24項目とした。
結果の平均正解数は、朝倉らの調査と対比するため、20問中となっている。
ちなみに正解率が高かったのは「食前」「効力」「点眼」「下痢」であり、正解率が低かったのは「PTP包装」「ジェネリック医薬品」「OTC薬」「半減期」であった。
この報告は2003年なので、いま(2015年5月)同様の調査を行えば、マスコミに登場する機会の多い「ジェネリック医薬品」や「OTC薬」は正解率が異なるであろう。
しかし、この結果はほとんどの医療用語の使い方にかなり注意しなければならないことを示している。
「中学生が理解できるように説明する」ということは、非常に分かりやすい言葉を使う必要があるということである。
自分の服薬指導を振り返ってみるのはもちろんだが、他の薬剤師の服薬指導も聴いてみることをすすめる。
医療用語が、かなり使用されているのがわかるだろう。
専門用語をわかりやすくする基本は、普通の言葉に置き換えることや例え話でわかりやすくすることである。
難しい用語を簡単な用語に置き換えるのに、非常に参考になる資料がある。
国立国語研究所の『「病院の言葉」をわかりやすくする提案』である。
これは、医療の専門家と言葉の専門家が、患者さんにとって重要でありながら分かりにくい「病院の言葉」を取りあげ、わかりやすく説明するための工夫をしたものである。
ホームページにて閲覧できるほか、書籍としても出版されている。
患者さんから病態・治療について相談や質問をいただいたとき、大変役立つ資料である。
患者さんから医療用語の質問をいただいたときなどに、活用をおススメする。
第4章では口頭で説明する場合に、相手に聞きやすくするための「原則」について紹介する。
次章 >> [第4章 わかりやすくする工夫]
3 コミュニケーション ナビゲーション
[第3章 医療用語] ←今ココ
↓ もし良かったら、この記事をシェアしていただけると嬉しいです。