[第6章 実例]


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 1  薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」 

[第6章 実例]

 

 

最初にレジュメを掲載する。

1レジュメ

 

 

ここでは、実際の勉強テーマやリアルな勉強について紹介する。

自分の不勉強を公開するので非常に恥ずかしいのだが、是非、参考にしてほしい。

 

 

 

「薬勉」step①勉強のテーマを設定するの具体例

 

「便秘薬」

私が勤務していた薬局は、内科(消化器)のCLの門前である。

高齢者の患者さんが多く、生活習慣病が疾患割合の多くを占めている。

高血圧症、糖尿病、高脂質血症の治療薬の処方頻度が高いので、重要なテーマはこれぐらいだと思っていた。

確かにこの領域の薬は種類も量も多く、新製品もドンドン採用されている。

しかし、日頃の業務をていねいに見直してみると、自分がわかっていない事実がでてきた。

それは、「便秘薬」である。

よく調べると量もガンガンに出ている。

しかも、ほとんどは2種類以上で処方されている。採用品目も多い。

よく考えてみると消化器内科の門前なので、当たり前のことなのだが、先入観でみえなかったのだ。

その時に初めて意識したのだが、確かに患者からの質問・相談も多かった。

先入観にとらわれずに見直すことの大切さを再認識した実例である。

 

 

「高血圧症」&「降圧剤」

血圧の薬に関しては、患者さんは多いのだが、勉強の必要性は感じていなかった。

ある日、患者さんからいただいた質問や医薬品集をていねいに見直してみた。

レセコンで調べると、ダントツで処方量が多い領域だったからだ。

すると、自分が理解不足である点がわんさか出てきた。

恥を忍んで、私が「高血圧」について疑問に思ったテーマを挙げてみると、

 

・利尿剤の種類の違いは?また、その使い分けはどのようにするのか?

・抗アルドステロン剤を患者さんにわかりやすく説明できるか?

・ARBと直接的レニン阻害剤との臨床的な違いは?

・降圧剤の処方の優先順位は?

・家庭血圧の正しい測定方法は?

・家庭血圧をはかる血圧計はどこのメーカーがいいのか?

・β-ブロッカーを患者さんにわかりやすく説明できるか?

・同種同効薬で有効成分量が違うことを患者さんにわかりやすい説明ができるか?

 例:カンデサルタンシレキセチル8㎎とバルサルタン80㎎へ変更になった場合

 

 

「多く患者さんからいただく同じ質問」

たとえば、いわゆる風邪の薬で「症状がよくなったら、飲むのをやめていいですか?」というもの。

このような何回も質問をいただくテーマは、キチンと勉強し標準解答を用意しておく必要があるだろう。

 

 

「先回りして解決しておくテーマ」

一包化の処方が多い薬局では、クリニックから一包化の可否を問われることが多い。

つまり、安定性・一包化の可否についてまとめた資料があると便利なのである。

また、新しく薬を採用する場合は、予め調べておくのが賢い。

 

 

 

「薬勉」step③勉強するの具体例

 

「領域の勉強」

薬そのものの勉強のほかに、その領域で使用される薬を勉強する場合がある。

たとえば、「睡眠導入剤について情報を整理したい」など。

まず第一にやるべきことは、種々の医薬品集を見ることである。

領域別にまとめられた医薬品集(代表的なのは「今日の治療薬」)には、基本的な薬物治療の戦略とともに薬の一覧が掲載されている。

この一覧表の比較されている項目を確認する。これは、この領域の薬のどこが大事なのかを示すものである。

このことは、同種同効品が発売された場合に、どこをチェックすればよいかを示すものでもある。

先ほどの例-「睡眠導入剤」についてみてみよう。

出典:コンパクト医薬品情報集 ハイリスク治療薬2010年版 (じほう社) 

この医薬品集の睡眠薬一覧P.448では作用時間によって分類されているのがわかる。

比較の項目も、「効果発現」「半減期」「作用持続時間」である。

つまり、睡眠薬は「効果発現時間」と「作用持続時間」が分類上、もっとも重要な項目である。

不眠症の病態は、「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」に分類されている。

(上記の分類に「熟眠障害」を伴うかどうかを考慮する。)

これらの病態により、処方する薬が選択されるためである。

 

また、メインの一覧表の下に「ω受容体について」の記述がある。

これは、睡眠薬の作用部位にはω受容体があり、ω1とω2の2種類の受容体が存在する。

ω1受容体は「睡眠・鎮静作用」、ω2受容体は「抗不安作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用」に関与する。

すなわち、ω受容体の選択性により、より限定的な効果が期待できるということである。

「ふらつき」の少ない薬を選択する場合の重要な指標になろう。

 

この他に勉強しておくべき重要な情報は、睡眠薬の離脱方法である。

P.447 にBZ系睡眠剤の離脱法がまとめられている。

連用後の突然の中止は、反跳性不眠を誘発し、依存の一因になる。

このため、患者さんには自己判断で服用を変更しないよう説明しなければならない。

また、短時間型と長時間型では、離脱の方法が異なることも知っておこう。

このように、医薬品集の情報は、重要事項が整理されている。

分野・領域毎に何が大事なのかをつかんでおこう。

 

 

「自分なりの切り口で分野・領域毎に薬をまとめたい。」と考える方もいるだろう。

手間はかかるが、大変に勉強になる。作成された資料は、あなたの大切な財産であり、実力の証である。

「この分野の薬については、このような一覧表があったら便利。」と思ったら、さっそく実行してみよう。

私も何点か作成したが、2点だけ注意したい。

自分で情報整理する場合(一覧表を作成する場合)は、必ず表計算ソフトを使用してほしい。

※ほとんどの方がそうすると思うが、念のため。

これは、後から比較の項目を追加したり、新製品が発売されたときに改訂できるからである。

また、一覧表でまとめた場合、出典・情報源を欄外に記録しておくこと。

(日本医薬品集、今日の治療薬的なものは、版数も記入する。)

 

 

「妊婦・授乳婦とくすりについて」

私の薬局では、妊婦や授乳婦の患者さんはまれにしか来局がない。

しかし、患者さんの数は少なくても、必ず勉強が必要なテーマのひとつであろう。

私のおすすめは、愛知県薬剤師会が公表している資料である。

「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き

これは、PDFで97ページの資料である。

(愛知県薬剤師会>医療関係者用サイト>資料箱 からダウンロード可能

基本的な考え方は、これでカバーできるだろう。

ご存じの方も多いと思うが、本格的な勉強を目指す方は、以下の書籍が役に立つ。

 

「スキルアップのための妊娠中の女性への服薬指導」(南山堂)

「妊娠中の女性と薬物治療の考え方 投与時の注意と禁忌」(ヴァンメディカル)

「実践 妊娠と薬」(じほう)

 

授乳に関する資料として外せないのは、「国立成育研究センター」のサイトである。

ネットで授乳に関する検索を行っても、ここに行き着くことが多い。

このサイトの医療関係者向け情報>授乳とお薬に関して の中に「ポジティブリスト」と「ネガティブリスト」が掲載されている。

(処方をしてもよい薬とダメな薬のリスト)

処方の可否を判断する重要な資料になるだろう。

 

※ご参考

・「今日の治療薬」(南江堂)には妊婦への投薬に関して、FDA Pregnancy Categoryによる評価が掲載されている。

(FDA Pregnancy Category:米国の添付文書における妊婦への注意の記載要領)

授乳婦への投薬に関しては、Medications and Mothers Milk基準による評価が掲載されている。

・「治療薬ハンドブック」(じほう)には妊婦の投薬に関して、虎の門病院の危険度評価方法による評価が掲載されている。

 

 

 

「業務への応用」

「薬勉」を実施していると、勉強した資料が思った以上に業務に活用できたり、勉強がきっかけで業務の幅が広がることがある。

ここでは、勉強がきっかけで業務に応用できた例を提示する。

 

・抗血栓薬、抗凝固薬の一覧表とお薬手帳

ワーファリンを勉強したことがきっかけとなり、この領域の薬を一覧表でまとめることにした。

最初は、簡単に「各薬剤の半減期」「効果消失のための時間」「出血時の対応」を整理した。

この表は、門前の医師(消化器内科)の内視鏡実施のための参考資料として感謝された。

(ちなみに、2012年7月に日本消化器内視鏡学会より「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」が発表されている。)

また、内服薬のお問い合わせを行った近隣の歯科医師への参考資料としても大変喜ばれた。

 

さらに、近隣の歯科医師からのお問い合わせをきっかけに、抗血栓薬・抗凝固薬を服用している患者さんのお薬手帳の活用を確認することにした。

ワーファリンは、もっとも相互作用が多い内服剤のひとつだからだ。

これらの薬の処方患者を調べ、「お薬手帳の活用状況」を再度確認した。

もちろん、お薬手帳を作成したときに、活用方法は説明してあるのだが、ほんとうに活用されているか心配になったのである。

実際の手帳の使い方を聞き、問題があった場合には再度説明した。

予想通りに問題のある患者さんが多く見つかった。

「えっ、歯医者さんにも見せるの?」「眼科は目薬しかもらってないから必要ないと思った。」など。

私は、反省した。

「自分が説明した。」ことと「患者さんが理解して実行する。」ことは別だったのだ。

詳しく説明したからといって、患者さんが理解したとは限らないのである。

この認識が得られただけでも、大きな収穫であった。 この一件から、お薬手帳の複数回の説明を実施している。

これらの業務への応用は、ワーファリンの勉強がきっかけである。

 

※あなたの患者さんが高齢者の場合、次の点を確認することをおススメする。

「歯医者さんにかかっていますか?」

「歯医者さんや眼医者さんにもお薬手帳をもっていってますか?」

 

 

・睡眠導入剤

対象患者も採用品目も多いため、睡眠薬の情報を整理した。

勉強をすると、その薬について患者さんに服薬指導がしたくなる。

睡眠剤の服用状況や効果を聞き、アルコールとの相互作用などを説明していた。

ある患者さんにも同じように説明し、たまたま世間話になったときに「アメリカの娘のところにいくんですよ。」となった。

「それは、よかったですね。」と言いかけて言葉を飲んだ。その患者さんにはフルニトラゼパムが処方されていたのだ。

少しもよくないのである。フルニトラゼパムは、米国、カナダでは麻薬扱いであり、一切持ち込み禁止になっている。

特に9.11以降、空港におけるチェックは大変厳しくなっているらしい。

もちろん、患者さんに同意をいただいて、先生に処方の変更をしていただいた。

これがきっかけで、海外旅行に行く場合の医薬品の手続きを勉強し、非常に役にたった。

聞いてみると観光、仕事、登山などで海外渡航する患者はかなり多く、連休・年末年始の前にも注意して確認するようになった。

一緒に登山する仲間の方を紹介され、予防薬をもらいにきていただいたこともある。

 

 

 

以上、ささやかではあるが、私自身の実例を紹介させていただいた。

 

ある予備校の先生の言葉である。

「勉強を習うより、勉強方法を習え!」

この「薬勉」があなた自身の少しでも役立つのならこれ以上の幸せはない。

 

 

 

1 薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」 ナビゲーション

[第1章 はじめに]

[第2章 「薬勉」とは]

[第3章 「薬勉」step① 勉強のテーマを設定する]

[第4章 「薬勉」step② 勉強材料を集める]

[第5章 「薬勉」step③ 勉強する]

[第6章 実例] ←今ココ

 

 

 

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