前章 >> [第4章 「薬勉」step② 勉強材料を集める]
1 薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」
[第5章 「薬勉」step③ 勉強する]
前章では、各種の勉強材料について紹介した。
「薬勉」step③では、勉強そのものについて考察する。
step③勉強する。
調剤業務に応用するための勉強のコツは、2つある。
それは、「音読」と「勉強したことを説明してみること」である。
大切なポイントは音読する。
勉強した内容は、実際に声に出して説明してみよう。
アウトプットを前提にした勉強をすることで、理解は各段に深まる。
実際に説明することで、わかりやすい説明の練習になるとともに、その内容の記憶は強化されるのである。
「ステップ③の基本方針」
最初に、どのような勉強テーマにも共通する基本方針を説明する。
それは、「音読」と「勉強したことを説明してみること」である。
あなたは、勉強の内容をきれいにノートにまとめるタイプだろうか?
「薬勉」では、テーマと材料はノートに記録するが、勉強内容は原則としてノートにまとめる必要はない。
そのかわり、大事な部分は「音読」をしてほしい。
勉強の際、声に出してテキストを読むことは、記憶に残りやすいからだ。
「音読」の重要性は、多くの勉強本、科学者により支持されている。
「夢をかなえる勉強法」伊藤 真著(サンマーク出版)では、いろいろな勉強の工夫が紹介されている。
その中で「セルフレクチャー」という方法がある。(P.65)
これは、勉強した内容を自分で自分に講義する方法で、著者が主宰する塾においても実践をすすめている。
人にレクチャーするには、その事柄が理解できていなければならない。
自分がわかっていなければ、人にわかりやすく整理して伝えることなどできないからだ。
特に、患者さんや医師からの質問・相談の場合には、何回も説明の練習をする。
この実践は、記憶力の強化はもちろんだが、わかりやすく説明するという点でも練習になるのである。
アウトプットの重要性も「音読」と同じように、効率的な勉強方法として確立されている。
以上の2点が、勉強の基本方針である。
大事なのは、声に出して読むこと、実際に説明してみることなのである。
「勉強する」
勉強するべきテーマが決まる。
勉強材料を集める。
ここまでは、この2つの流れを説明してきたのだが、いまひとつ具体的なイメージが浮かばない人もいるかもしれない。
そのためにテーマから勉強の実際をいくつか説明したい。
・薬について勉強する場合
添付文書で基本事項、インタビューフォーム(以後、IFと略す)で細かい内容を勉強するのが基本。
これらの材料は、必要な部分だけを読む。
(IFで読み方の一例を紹介したが、非常に少ない量である。)
では、必要な部分とはどこか?
それは、これまでに業務で調べた項目である。
「薬勉」step②勉強材料を集めるところで、添付文書の説明をしたが、勉強するのは同じ項目である。
調剤上確認したこと、医師からの質問、患者さんからの相談などで確認した項目を選ぶのである。
この項目を「探し読む」のである。
言い換えると「質問・相談想定読み」あるいは「業務上必要項目読み」である。
これを実行するためには、普段の質問・相談をトレースしておかなくてはならない。
そこで、勉強ノートが活きてくる。
チェックする項目は、薬や領域によって多少異なる。
まずは、添付文書とIFに何が書いてあるかを把握することが第一歩である。
この2つは、どれも同じ形式で作られているため、薬や会社を選ばない。
この第一歩は、疑問が生じた場合にどこを見れば解決するかという勉強にもなっている。
新しい薬理作用の新薬の場合は、添付文書とIFに加えて「使用上の注意の解説」も読んでおく。
また、新薬の副作用を確認する場合には「同じような症状の別の言葉」に注意する。
「眠気」と「ふらつき」、「だるさ」と「倦怠感」、「下痢」と「軟便」など
このような表現がある薬は、特定の副作用の発生頻度よりも多く発生する可能性がある。
新薬の場合は、副作用の種類ごとに頻度が示されている。
臨床試験の結果をそのまま掲載しているのだ。もちろん、副作用の発生は非常に厳格に行われている。
したがって、ある症状の発生頻度は信用してもよい。
問題は、医師により言葉や表現が異なる場合がでてきてしまうことだ。
同じような症状でも、A医師は「だるさ」と判定し、B医師は「倦怠感」と判定することである。
同じような内容の副作用は併せて考えるべきである。
新薬によっては、医薬雑誌で特集されることが多いので、こちらも参考にする。
特に薬局薬剤師向けの記事の場合、「服薬指導の注意点」や「薬理作用を示した図・イラスト」が掲載されることが多い。
自分の知識の復習や患者さんへの説明を考える材料になる。
・薬物治療について勉強する場合
領域別の医薬品集と疾患ガイドラインの薬物治療の項目が役に立つだろう。
記述の形式はガイドラインによって異なるが、薬のポジショニングが整理されて記載されている。
使用薬剤の優先順位、薬剤を併用する場合の方法、症状別の使用薬剤などがまとめられている。
この情報を整理することは、すなわち「薬物治療」を理解することでもある。
ある薬で問題が発生し薬の変更を行う場合は、まずは変更する薬が主治医の薬物治療戦略に沿っている薬かどうかが前提になる。
医師と薬の選択を相談する際には、必須の資料になることは、言うまでもない。
※疾患ガイドラインについては、「薬勉」step②勉強材料を集めるの中で紹介している。
・調剤報酬改定について勉強する場合
ご存じ、2年に一度、頭を悩ます問題である。
勉強する時期は実施の前後に限定されるものの、薬局の方針を決めなければならないため、かなりシビアである。
まず、事前に製薬メーカーや代理店から、いろいろ情報が提供されるので、大まかな流れや目玉の改定点はつかんでおく。
改定が公示されたら、厚生労働省の下記の資料を確認すること。(ちなみに平成26年度は、3月5日公示であった。)
厚生労働省>平成○○年度診療報酬改定について>第3 関係法令等>
(2)-3診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)>
別添3(調剤点数表)PDF・様式(調剤)PDF
紹介した資料は、調剤報酬の各点数はもちろん、算定における考え方が全項目まとめられている。
熟読し、改定された部分にマーキングする。
この勉強方法のよいところは、改定された部分以外の勉強もできる点である。
つまり、調剤報酬について体系的に復習できるのである。
この後、解釈や運用で疑問が多い部分について、「疑義解釈資料の送付」が行われる。
これは、解釈がわかりにくい箇所や質問が多い項目をQ&A方式で解説してある資料であり、非常に重要である。
通常、複数回(年度によって異なるが、3回程度)発信されるので、注意する。
もちろん、医科の改定部分についても同じように発信されるので、調剤に関連する部分はチェックしておこう。
・大きなテーマを勉強する場合
大きなテーマを勉強する場合は、ファイルを作成するのが正解である。
論文、新聞・雑誌の切り抜きなどを探し、必要な資料をどんどんファイルに入れていく。
ネットでよい資料を見つけた場合は、とりあえずデータを保存する。
そして、その資料の表紙のみプリントアウトするか、URLをメモしてファイルに入れておく。
これは、勉強資材の一元化のためである。すべての資料を確認できるようにそろえておくのである。
たとえば、「在宅」を勉強しようとすれば、驚くほどの勉強材料があつまるだろう。
薬剤師会関連のガイドブックやマニュアル、医薬関連雑誌の特集記事はもちろんだが、ネットでも大量の情報が入手可能である。
ある程度の情報が集まった後にあなたがやるべきことは、「整理」である。
在宅の資料をさらに分類してファイリングするのである。
この先、ファイリングがしてあるかないかで大きく資料の価値は変わってくる。
まず、分類してあれば、必要なテーマが探しやすい。つまり、勉強しやすいし、調べやすい。
また、「在宅」はテーマが大きいので、さらに勉強材料を入手する必要があるテーマが判別しやすい。
大きなテーマの場合、入手した勉強材料は「整理」をすることを忘れないでほしい。
以上で「薬勉」step①から③をすべて解説した。
あなたの頭の中には、具体的な勉強のテーマが患者さんの顔や薬のPTPシートとともに、浮かんでいるはずだ。
ここまでの内容ついては、第6章にレジュメを掲載している。是非、参考にしてほしい。
次の第6章では、テーマの設定やリアルな勉強の実例を紹介する。
すべて、実際に私が経験したことである。
ていねいに観る、ていねいに探す、そして、記録する。
たったこれだけのことで、明日から勉強するテーマでいっぱいになるだろう。
勉強する材料が多いことにも驚くに違いない。
そして、業務の時間を短く感じるようになる。
なぜなら、このシステムは本日只今の業務に全力で取り組むことに他ならないからだ。
最後にもう一つ、気づくだろう。
患者さんと医師から信頼されているあなた自身に。
以上
次章 >> [第6章 実例]
1 薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」 ナビゲーション
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