[第4章 「薬勉」step② 勉強材料を集める]


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 1  薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」 

[第4章 「薬勉」step② 勉強材料を集める]

 

 

いきなり、セコイ話で恐縮だが、医療関係の書籍は高い。

もちろん必要なものに関しては躊躇なく購入するべきだが、まず、身近にある資料の活用を考えるのが正解だ。

「薬勉」step②では、何を使って勉強するかを解説する。

 

 

 

step②勉強材料を集める。

テーマが決まったら、今度は身近な資料をていねいに見直す。

私の場合、勉強材料の8割以上は、身近な資料とインターネットで収集可能であった。

ポイントは、収集した勉強材料と疑問点の解決方法は勉強ノートに記録することである。

なお、勉強した内容は記入する必要はない。

何を見て勉強したか、何を調べたか、もっとも役に立った資料は何かを記入する。

具体的には、書籍名とページ数、論文、サイト名、TELで問い合わせたなら宛先(部署名)など。

これは、同じような疑問や勉強テーマが生じたときに、参照するためである。

この勉強ノートがあなたの知識の引き出しになるのだ。

 

 

 

「勉強材料」

勉強材料を探すうえで重要なのは、「使える材料」を見つけることである。

多くのテーマで頻繁に使われる材料は利用価値が高い。

つまり、どんな資料でどんなことが勉強できるかを知ることが、材料集めの第一歩なのである。

ちなみに、私が患者さんからいただいた質問のほとんどは、身近な資料で解決できるものであった。

その身近な勉強材料について紹介する。

ここで紹介する勉強材料は、ほとんどが無料で入手できる。

「薬勉」は、財布にやさしい勉強方法なのである。

 

この章で紹介する勉強材料一覧

・添付文書

・インタビューフォーム

・医薬学関連の文献

・医薬関連雑誌

・ガイドライン

・講演会、研究会

・本

・MR(勉強材料提供者として)

 

 

 

・添付文書

詳細な説明は必要ないだろう。

もっとも身近にある勉強材料であり、薬の基本事項について記載されている勉強材料である。

頭に叩き込んでほしいのは、この文章は唯一の法的根拠のある医薬品情報であるということ。

訴訟、裁判になったときの判断材料になると考えればよい。

つまり、疑義照会の根拠になるという意味である。

ここでは、チェックしておきたい項目を挙げておく。

日常業務で、これまでに質問、相談、疑問の解答としてチェックした項目である。

復習のつもりでお読みいただきたい。

 

①貯法

薬局内のストックはもちろん、患者さんに保管方法を説明するときに必要な情報。

「凍結を避け~」「開封後~」に注意する。

 

②警告、禁忌

もっとも重要な項目である。熟読し、頭に入れておく。

 

③効能又は効果

剤型や服用量によって効能・効果が異なる薬に注意する。

 

④用法及び用量

③と重複するが効能・効果ごとに、用法・用量が設定されているケースに注意する。

「適宜増減」の有無を確認しておく。処方監査の大切なポイントになる。

ややこしいのは、「適宜増量」「適宜減量」の薬があること。

上記に関連して、高齢者、小児、腎障害・肝障害の患者さんへの用量設定も重要である。

 

⑤副作用

後発品の添付文書には、副作用の発生頻度が記載されていないことは注意すべき点である。

なぜなら、副作用を患者さんに説明する場合は、頻度の高い副作用(もしくは薬理作用に基づく副作用)を優先するからである。

必ず、先発品の副作用の項目を確認すること。

 

⑥相互作用

「併用禁忌」については、熟読し、頭に入れておく。

 

⑦薬物動態

薬剤師がもっとも活躍できる項目である。

この項目から読み取れる情報は多く、少し応用できればいろいろな質問や相談にも対応できる。

添付文書の書き方によって異なるが、以下の項目などが読み取れる。

これらは、いろいろな質問や相談に対応できる項目である。

 

・組織移行性(分布容積)

・効果発現時間

・作用持続時間

・定常状態になるまでの時間

・薬の増量、併用の注意点

 

※添付文書によっては、薬物動態の各指標が記載されていない場合がある。(発売が古い薬剤と後発品の一部)

その場合には、インタビューフォームを確認してみよう。

 

⑧臨床成績

ここでもっとも重要なのは、「何を改善したか?」である。

降圧剤であれば、「血圧」、糖尿病薬であれば「血糖値」である。

これは、患者さんへ薬の説明をする際、非常に重要である。

ほとんどの薬の臨床成績の指標はわかりやすいのだが、新薬の一部で難しいものがある。

この場合は、必ず調べておき、患者さんへわかりやすく説明する工夫もしておくこと。

 

※副作用の項目と重なるが、後発品では臨床成績の記載はない。

臨床試験を実施していないので当然であるが、後発品のみの採用の場合は、先発品の添付文書を確認しておく必要がある。

 

 

 

・インタビューフォーム(以下、IFと略す)

添付文書は紙面の制約があるため、必要最小限の基本情報しか記載されていない。

そのため、その薬の詳細な情報がすべてわかる訳ではない。

それを補完する資料がIFである。

薬に関する問い合わせや質問については、添付文書とIFでほとんど解決するだろう。

勉強材料としてIFを考えた時、もっとも有用性が高いのは新薬を勉強する場合である。

特にこれまでになかった新しい作用の薬の場合は必須である。

仮にこのような新薬を採用する場合、どのポイントを勉強するかを紹介する。

 

①開発の経緯

この項目はこれまでにない作用の薬の場合(または該当する疾患に効能をもつ初めての薬の場合)は、大変役に立つことが多い。

この疾患の定義や症状、有病率、これまでの薬物療法も書かれていることが多く、短い文で概要が頭に入るからだ。

また、これまでにない薬理作用の場合は、その説明もされている。

 

②製剤の各種条件下における安定性

一包化や粉砕などの可否を推測する項目である。

ただし、最終判断の前に、念のために企業に連絡し、確認をとっておく。

インタビューフォームにPTP包装から取り出して調剤していいかどうかが、記入してある場合もあるので確認する。

 

※一包化の判断のひとつとして、錠剤やカプセルにバラ包装があるかどうかをみる方法がある。

もちろん、バラ包装があればOKである。

 

③効能又は効果

新薬の場合、対象の疾患の診断基準がかかれていることが多い。

 

④用法及び用量

この薬の吸収・効果が食事の影響を受けるかどうかを確認する。

投与期間について縛りがあるかどうかをチェックする。

 

⑤探索的試験:用量反応探索試験または用量反応試験

前期第Ⅱ相臨床試験(臨床推奨用量を探る試験である。)

この試験では、いろいろな用量を試しているので、適宜増減が可能な薬剤の場合は、服用量の変化にともなう有効性と安全性をみることができる。

特に最大の用量の安全性の結果は、用法を間違えて多量に服用した場合の対応の参考になる。

 

⑥第Ⅲ相臨床試験

対象薬との比較試験の場合、対象薬と比較してどの程度の効果があったかを確認する。

つまり、どんな症状や検査値がどのように改善するのかを患者さんにわかりやすく説明できるようにしておくのである。

新薬の場合、効果の指標がわからない場合があるが、これは必ず調べておく。

 

⑦排泄

肝代謝型か腎排泄型かを確認する。

肝障害または腎障害の患者さんへの服用に制限があるかどうかも併せて確認する。

 

⑧重要な基本的注意とその理由及び処置方法

同系統の薬に共通の基本的な注意事項である。

(たとえば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬なら、心血管系、呼吸器系、中枢神経系において作用の増強の可能性があるなど。)

問題は、すべて同じなのかどうかである。

つまり、その薬特有の注意事項があるかないかを確認する。

 

⑨同一成分、同効薬

まったく新しい新薬の場合は、同一成分の薬はないが、同効薬は確認しておく。

これは、切り替えられる薬や併用の可能性のある薬を把握するためである。

 

⑩投薬期間制限医薬品に関する情報

新製品の場合は、使用制限期間を確認する。

連休、年末年始、海外渡航の際、注意する薬剤としてわかるようにしておく。

また、反対に制限解除のときもわかるようにしておくと在庫の管理などがスムーズである。

(急に処方が倍増されて、在庫が不足することがないようにという意味である。)

 

 

 

・医薬学関連の文献

これは、医薬関連雑誌等に掲載される研究レポートのことである。

これらの情報は、比較的大きな勉強テーマの材料を探す場合には、大変有用性が高い情報源である。

たとえば、「調剤薬局のお薬手帳の活用」について、調べるときである。

また、ある薬のデータの元の報告を調べたいときに入手するべき情報である。

重要な添付文章の改訂についても、根拠の報告は読んでおきたい。

(添付文書の改訂は、医師や患者さんに説明するケースもあるため。)

 

私は、主として2種類の情報源を活用にしている。

1つ目は、ネットの「JSTAGE」(無料だが一部の雑誌が有料)である。

キーワードで検索できるため、自分の勉強テーマに沿って情報を探すことができる。

 

2つ目は、製薬企業のMRである。

薬のデータの根拠となる論文や重要な使用上の注意の改訂があった場合の根拠の提供をお願いしている。

(もちろん、新薬の臨床試験報告をお願いする場合もある。)

特に、同種同効薬が一斉に同じ添付文書の改訂をする場合である。

たとえば、抗うつ薬に若年成人における自殺傾向リスクの警告を表示するようFDAが指示した問題で、日本で発売されている抗うつ薬すべての添付文書が改訂になった。このようなケースでは、改訂の詳しい内容は大切な勉強のテーマである。

内容によっては、薬剤の対応を門前の医師と相談するケースもある。

この場合は、根拠の文献は必ず押さえておきたい。

自分の薬局を担当しているMRの方へお願いしてみよう。

 

 

 

・医薬関連雑誌

薬剤師会の入会状況にもよるが、数種類の薬学関連雑誌があなたの薬局にも届いているはずだ。

製薬メーカーの薬局向け資料も定期的に送付されているかもしれない。

これらの雑誌についても、参考になる記事が多い。

特に特集記事の内容は、確認しておこう。

 

「日経DI」「クレデンシャル」「ファーマトリビューン」など

→疾患の特集

通常、病態、診断、標準治療がコンパクトな量にまとめられている。

雑誌の記事なので情報量は数ページであるが、逆に概要を短時間で勉強する場合には適した情報である。

自分が理解不十分だと思った疾患であれば、切り抜いてストックしておく。

持ち運べる情報なので、隙間時間の勉強に適している。

本格的に勉強するなら後述する「ガイドライン」が適している。

 

→話題の新薬の解説

大型の新薬、または、話題の薬などが発売されると、関連記事が載る。

このときに、領域で使用される薬や治療方針なども特集されることがある。

これがねらい目である。

新薬の勉強を機に、その分野の薬の情報をまとめるのである。

あなたの薬局で使われているその分野の薬剤を整理するチャンスである。

 

→現在のトレンドを勉強する。

雑誌では、薬剤師にとって重要なテーマが特集される。

井の中の蛙にならないように、現在のトレンドを把握しておく。

「在宅」「後発品」などは、高頻度で特集されている。

特集をチェックするだけで、薬剤師や薬局によって大切なキーワードがわかる。

自分の薬局の現状や方向性を考え、自分自身の勉強テーマとして活用する。

 

「日本薬剤師会雑誌」

あなたの薬局が日本薬剤師会に入会している薬局なら、この雑誌が届く。

この雑誌の最後に掲載されている「日薬医薬品情報」が重要である。

特に「副作用」の解説については、副作用の症状、頻度、発生メカニズム、薬剤師として注意すべき点がまとめられており、一級の資料である。

激しくオススメする。

 

 

 

・疾患ガイドライン

特定の疾患を勉強する場合には、必要かつ十分な内容の勉強材料である。

専門医つまり学会が病態、診断、治療についてEBMに基づきまとめたものなので、もっとも信頼性の高い情報が学べる。

処方が多い疾患や門前のDRの専門に関する疾患は、この素材で勉強するべきだろう。

ガイドラインについては、ネットである程度入手可能である。

(ガイドラインがまとめてあるサイトもあるが、学会が掲載している場合がある。)

 

ガイドラインが勉強できるサイト「Mind」

ここの「メインメニュー」から「ガイドライン」を選択して調べる。

また、雑誌でもシリーズ掲載されることがあるが、重要な疾患であれば、書籍を購入してでも入手すべきである。

 

 

 

・講演会、研究会

あなたの薬局が大都市にあるのなら、毎月のように講演会や研究会が開催されているだろう。

自分で勉強したいテーマの講演会があれば積極的に参加すべきである。

一流の専門医が2時間ほどで講義してくれるのだ。

しかも、製薬企業主催の場合はほとんど無料である。

私の場合は、内容と講師を選び、年に6~8回ほど参加していた。

 

※講演会・研究会に関してとっておきの裏技を紹介しよう。

それは、門前の医師と同じ集会に出席することである。

大切なことは、会終了後、必ず先生とディスカッションすることである。

例えば、未採用の薬の使い方が紹介されていた場合は、その薬を使用する意志があるかどうか確認する。

もし、医師がその薬を使うのなら、採用・取り寄せの打ち合わせをする。

医師の治療に関する考え方(治療の対象など)も聞けるので、その薬の規格や発注量もその場で解決できる。

また、処方する目的や病態がかなり明確なので、服薬指導もやりやすい。

医師にとっても打ち合わせ済みのため、安心して処方できよう。

まさに一石をもって二鳥を落とすのである。

この裏技を実行するためには、医師の参加情報を教えてもらうために、日頃からMRとの関係性をよくしておかないといけない。

 

 

 

・本

勉強のテーマによっては、書籍の購入が必要な場合があるだろう。

あなたが「わかりやすいテキスト」を入手したいと考えていた場合におすすめのコーナーがある。

(特に特定分野の病態・治療について体系的に知りたいとき)

規模の大きな書店の看護師向けコーナーに行くのである。

医師向けコーナーにもわかりやすい本はあるだろう。

しかし、看護師向けのコーナーの方が読みやすい本に出合う確率が高いのである。

看護師は、医療に関する業務をほとんどカバーしているため種類も多い。

特に入門編、初めてのテーマを系統だてて勉強する場合は、一度は看護師向けコーナーを見てほしい。

 

 

 

・MR(製薬企業)

MRは勉強材料ではない。勉強材料提供者として理解いただきたい。

講演会、研究会のところでも申し上げたが、MRと関係性を良くしておくと、メリットが高い。

ここでいうメリットとは、もちろんサービス品や手土産のことではない。

採用されている薬の情報のことである。

新薬データでも紹介したが、今回は別の勉強テーマの話である。

メーカーは、強い分野がある。会社が力を入れて、伸ばした領域がある。

メーカーの屋台骨になっている薬が使われている分野、大型新薬が発売された領域がそれである。

その領域については、非常に多くの情報を持っている。

ベストセラーになった薬に関しては、臨床のデータはもちろん、マニアックな質問に対応できる情報もある。

彼らは、医療機関からの相談・質問に対する回答を蓄積しているからである。

これらは、MRからの情報伝達にとどまらず、会社のサイトで発信されている場合も多い。

その会社の強い分野はサイトをていねいに見れば、簡単にわかる。

サイトの閲覧が会員登録制の会社も一部あるが、学会情報や専門医によるレクチャー、薬剤師向けの情報など非常に有用である。

勉強のテーマが疾患、領域ならば、見てみるとよい。

 

※MRと良好な関係性を築くコツは、2つある。

「MRに役立つ情報を提供する。」と「その会社の製剤の問題点や改善点を提案する。」

(当然のことだが、患者さんの個人情報や競合している他社のことをベラベラ話すのは厳禁である。)

世の中は、ギブ&テイクが基本である。

 

 

 

以上が「薬勉」step②勉強材料を集めることに関する解説である。

どの材料でどのような勉強ができるのかを、ある程度イメージしていただけたのではないだろうか?

 

次の第5章では、勉強そのものについて解説する。

 

 

次章 >> [第5章 「薬勉」step③ 勉強する]

 

 

 

1 薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」 ナビゲーション

[第1章 はじめに]

[第2章 「薬勉」とは]

[第3章 「薬勉」step① 勉強のテーマを設定する]

[第4章 「薬勉」step② 勉強材料を集める] ←今ココ

[第5章 「薬勉」step③ 勉強する]

[第6章 実例]

 

 

 

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