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1 薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」
[第3章 「薬勉」step① 勉強のテーマを設定する]
薬剤師の勉強が難しい最大の理由は、勉強するテーマが多いことである。
ならば、勉強のテーマに優先順位をつければよいのだが、これが非常に難しい。
つまり薬剤師の勉強は、勉強のテーマさえ適切に決まれば、問題の半分以上解決したのも同然なのだ。
「薬勉」のstep①では、「勉強のテーマを設定する」方法を紹介する。
step①勉強のテーマを設定する。
あなたにとって最も優先順位が高い勉強テーマは、業務をていねいに見直し、気が付いたことをメモすることで設定できる。
(メモするのは、疑問点、困ったこと、勉強不足だと感じたことなどである。)
メモの内容をその日のうちに見直して、勉強テーマにするかどうかを決める。
設定した勉強テーマは、専用のノートに転記して一元管理する。(専用ノートを以後、「勉強ノート」と呼ぶ)
このステップで重要なのは、「業務をていねいに見直すこと」と「メモをすること」である。
この2点を詳しく解説する。
「業務をていねいに見直すこと」
業務を見直すとは、「現在の状況を正確に把握する」ということである。
言い換えると「己を知る」といってもよいだろう。
毎日、働いているのに、何をいまさらと思われるかもしれない。
しかし、ていねいに見直すと自分が理解していないことや疑問に感じたことが次々とみつかるものである。
それらは、今現在、業務に直結するのに、あなたに不足している知識なのだ。
まさに勉強するべきテーマの原石である。
それでは、具体的な業務の見直し方のコツ4点を紹介する。
①レセコンをみる
レセコンのデータから気づくことは非常に多い。
基本的には2点である。
・どのような薬が多くでているか?
どのような薬を勉強しなければいけないか?処方頻度が高い薬は、間違いなく優先順位が高い。
なぜなら、患者さんへ説明する機会が多く、患者さんからの質問をいただく可能性も高いからである。
まず、処方頻度が高い薬を見て、勉強不足の薬がないかを確認することが一番である。
・どのような疾患が多いのか?
これは、多く処方される薬と採用されている同種同効薬の種類が多い領域を確認することで推測できる。
基本的には、患者さんが多い疾患と門前の医師の専門領域の疾患については勉強するべきだろう。
また、薬そのものの理解の他に、採用されている薬剤の種類が多い場合は、薬の違いや使い分けについての理解が必要である。
そして、もっとも重要なのは、その疾患についての勉強である。
②患者さんからの質問・相談
患者さんからの質問・相談は、勉強テーマの宝庫である。
ある患者さんからいただいた質問は、他の患者さんも疑問に思っている確率が高い。
いろいろな患者さんから同じ質問や相談をいただいたときには、キチンと勉強し標準解答を用意するべきである。
③医師(医療従事者)からの質問・相談
基本的には、患者さんからの質問・相談と同様である。
ちなみに私は、「薬勉」を始める前は、医師からの相談されたことを記録していなかった。
勉強のテーマとして残しておけばよかったと後悔している。
④日常の業務における気づき
日常業務の中で、いろいろと気づくことがある。これを取り逃がさないようにする。
アイデアや疑問などであるが、もっとも大切なのは、あなたがわからなかったことである。
思いついたときに、メモをしておく。
このようにていねいに業務を見直すことで、勉強が必要なテーマである薬、疾患、質問、相談、疑問などを捕まえることができる。
「メモする」
業務を見直す。人から相談されたことを記録する。または、疑問に感じたことや自分の理解不足だと感じたことを見つける。
そのときに忘れずにメモする。勉強テーマの原石を忘れないようにするためである。
重要なのは、いつでもメモできる状態であること。
この条件を満たすのであれば、メモは何でもよい。
ちなみに私は、コピーやプリントアウトの失敗したA4の紙を使用している。
業務中なので、ゆっくりていねいにメモできるケースは少ないだろう。そこで、走り書き用の紙なのである。
急いでメモする場合は、キーワードだけでもよい。
このメモの内容は、その日にうちに勉強のテーマにするかどうかを決める。
人からの質問・相談、自分がわからなかったことは、原則、勉強テーマ確定である。
テーマに設定した場合は、勉強ノート(専用ノート)に転記する。
ちなみに、解決済のテーマも記録しておく。
このノートは、勉強のテーマを一冊で管理するためのものである。
くれぐれも、この作業はメモしたその日のうちにしておく。
「勉強ノートの記入例」
勉強ノートには、「テーマ」と「勉強材料・解決方法」の2つを記入する。
どちらの項目も後日、追加記入できるように十分な余白をとっておく。
「解決方法」の記入では、勉強材料の資料名や出典を正確に記入する。
たとえば、「今日の治療薬」を使った場合、何年度版かとページを記入する。
調べた内容については、記入する必要はない。
もしも、同じ内容の質問や相談を受けた場合、前回の日付の下に今回の日付を記入する。
要は、何回質問や相談を受けたかを記録するのである。
勉強のテーマによっては多くの資料が必要な場合もある。
そのようなケースでは、「勉強材料・解決方法」にすべての資料を記入するのではなく「ファイル」とだけ記入する。
実際にファイルを作成し、そこに資料をドンドン入れていく。
ちなみにファイルは、なんでもよいが、大きさはA4が入るもので統一しておくこと。
記事を新聞や雑誌から切り取る場合、日付・出典がわかるように付箋に書いておく。
※私は、製薬企業が添付文章改訂で送付する封筒をファイルに再利用している。
(資料がインターネット上のサイトやダウンロードしたPDFのような場合は、サイト名やPDFファイル名を記入したメモを入れておく。)
※少し、特殊な勉強テーマについて
たとえば、「睡眠導入剤の特徴をまとめたい」の場合。
その場合は、「勉強材料・解決方法」には「睡眠導入剤一覧作成」と記入する。
資料作成に使用した資料(添付文書、インタビューフォーム等)は、必ず「出典」として記録する。
PCのファイル名や手作り資料の名前を同じにしておこう。(資料名とファイル名が異なると、探すときに混乱するからである。)
勉強ノートの余白に自分のルールで、いろいろなことを記入してもよい。
たとえば、季節毎に勉強すべき内容もあるだろう。インフルエンザ、スギ花粉症、熱中症、医療費控除など
この場合には、勉強や復習をする時期をノートとカレンダー等に記入しておく。
さらに、更新が必要な場合には、文字の色を変えて『更新』と書いておく。
こうすることで、勉強の計画にも役に立つ。
勉強ノートのメリットは非常に多い。
①日々の勉強内容を記録していくこと自体が契機となり、勉強のモチベーションや集中力が格段に上がる。
②質問・相談の回数もトレースできるので、重要度が高い内容が明確になる。
③解決方法が記入されているため、2回目以降同じテーマが発生したとき、迅速かつ正確に対応できる。
④自分が集めるべきテーマが明確なため、いろいろな情報が入手しやすい。
⑤季節や周期毎に出てくる質問や相談がわかり、復習や準備が容易である。
勉強ノートに書かれているテーマは、業務に直結しており、かつ必要なことが確定した内容である。
簡単な質問・相談でも、さらによい答えが見つかれば、追加で記入する。
頻繁に質問を受けるテーマなら、続けて資料や解決策を探し、さらに優れた材料が見つかったら更新する。
以上が『「薬勉」step① 勉強のテーマを設定する』方法である。
日常業務の中に、非常にたくさんの勉強のヒントがあることを理解いただけたと思う。
設定された勉強テーマは、原則、業務の中から生まれている。
これは、今後もその知識が必要になる可能性があるということだ。
優先順位が高い勉強テーマと考えてよいだろう。
次の第4章では、設定した大切なテーマの勉強材料について考える。
次章 >> [第4章 「薬勉」step② 勉強材料を集める]
1 薬剤師の最強勉強システム 略して「薬勉」 ナビゲーション
[第3章 「薬勉」step① 勉強のテーマを設定する] ←今ココ
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