服薬指導 小児の薬の飲ませ方


服薬指導 小児の薬の飲ませ方

[はじめに]
「電話相談からみた小児服薬指導の問題点の解析」(松本康弘ら 日本薬剤会雑誌 第60巻 第5号 平成20年5月1日 607-611)という論文がある。
内容は、薬局に寄せられた小児の薬に関する電話相談を解析したものだが、もっとも多い相談は「薬が飲めない、薬を出した」であった。
(ワタナベ薬局上宮永店に、平成15年8月1日~平成17年7月31日の間に電話で受けた問い合わせ315件を解析したもの。)
結果を論文から引用する。

①薬が飲めない、出した:60件
②併用薬       :56件
③服用方法      :54件
④頓用薬の使用方法  :45件
⑤副作用       :28件
⑥処方内容      :23件
(この6項目で約80%を占めた)

確かに自分の(調剤薬局の)日常業務でも、小児の薬に関する相談は「服用に関するもの」が最も多い。
そこで、薬剤師はなんとかお子さんが薬を飲みやすくするために日夜頑張るわけだが、その工夫をまとめようと思ったのが、このコンテンツを作るキッカケである。
小児の服用に関する質問をいただいたときは、あれこれと調べるのだが、あとは記録に残さずに放りっぱなしになっており、細かいことを忘れてしまっている。そこで、これまでに勉強した内容を整理した。
私の働く薬局の門前は外科・内科がメインなので、小児科の門前薬局ほどの引き出しや裏技は少ないが、小児の医療に携わる皆さまの参考になれば幸いである。

[基本事項]
小児の薬の飲ませ方をご家族に説明する際の基本事項を挙げる。もちろん、薬の種類や患者の年齢によって内容はアレンジが必要になるが、私自身はこの内容を骨格にしている。

・「残ったお薬は処分してください。」

・「シロップ薬・坐薬は冷蔵庫に保管してください。」

・「お子さまが誤って飲んだりしないように、お子さまの手の届かないところに保管してください。」

・「お薬を上手に飲めたときはほめてあげましょう。」

・「お薬を飲んでアレルギー反応や副作用が現れるなど、からだに合わないお薬があった場合や、食べ物アレルギーがある場合は、そのお薬や食べ物の名前をおくすり手帳に記入しておき、受診時に医師に見せましょう。」

・「お薬やその他を混ぜる場合は、飲ませる直前に1回分だけを混ぜるようにし、作り置きはしないでください。」

・「お腹がいっぱいで飲んでくれなかったり、食べ物と一緒に吐いてしまうことがあるので、特に医師からの指示がない場合、薬の服用は授乳・食事の前でも差し支えはありません。1日3回の場合は、朝・昼・夕と大体5~6時間空けるとよいでしょう。」

・「服用時に寝ているときは無理に起こさず、その後時間をずらして飲ませましょう。」

[マスキング]
薬の味を何とか飲みやすくする工夫は、小児の薬にとっては必須事項である。

・薬の味をマスキングするのに、簡単に試せるのは「砂糖」「単シロップ」である。ちなみに、単シロップは珈琲・紅茶用のポーションタイプが便利である。

・味のマスキングは、基本的に甘い飲料が基本になる。
ただし、医薬品の一部には胃内の酸性で溶けるコーティングをしている製品(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)があり、このような薬剤を酸性のオレンジジュースやスポーツドリンクで溶かすと苦味が出てくるので注意が必要である。

・マスキング効果が高いのは、「ジャム」「プリン」「コンデンスミルク」だが、「ミルクココアの粉末」「チョコレートスプレッド」は、特に効果が高い。

・アイスクリームは舌を冷やし、味を感じにくくする。患児の胃腸の状態にもよるが、夏場には適応しやすい。

・患児によっては、味噌汁などの濃い目の塩味を好むケースがあることも選択肢として知っておきたい。

[服用ゼリー]
自分も勘違いをしていたのだが、服用ゼリーは薬と混合せずに薬を覆うように飲むのが正解である。当然ながら、薬の味が舌に出てくることが少ないため。
一般的なやり方は、スプーンにゼリーを広げ、その上に薬をのせ、その上にまたゼリーを広げて咀嚼せずに飲み込む。

・セリーを開封するするときに、水がでることがあるので、初めの水は捨ててから使う。

・ゼリーは、散剤以外にも錠剤、カプセルにも使用できる。

・ゼりーは腐敗防止のためにpHを3.9以下にしている製品があり、酸性で苦味がでる薬には使用は難しいことがある。
その場合、チョコレート味のゼリーをチョイスする。チョコレート味のゼリーは、中性でマスキング効果が高いためである。

[食べ物に混ぜる]
・そのまま水で飲めない場合は、粉薬に好みの食べ物を少量(スプーン1~2杯位)加えて食べさせる方法がる。そのあとはお薬が口の中に残らないように、飲み物を飲ませる。服用ゼリー同様、均一に混ぜるよりも、粉薬をはさむようにして食べさせるとよい。

・(重要)ミルクやごはんは栄養源であるため、混ぜないよう指導する。味が変わって飲み残したり、ミルク嫌い、ごはん嫌いになったりするおそれがあるためである。また、炭酸飲料やスポーツドリンク、果汁の多いジュースなどは、お薬の吸収や効果に影響を与えてしまう場合があるので、基本混ぜないように説明する。

・粘性が高く、甘味が強いはちみつは使いやすいと考えがちだが、1歳未満の患児には乳児ボツリヌス症を発症する危険性があることから、使用しない。

・食べ物にお薬を混ぜているところを患児に見せないようにする。食べ物を見ただけでお薬が混ざっていると思い、その食べ物を嫌いになることがあるため。

[オブラート]
口の中にくっつきやすいため、オブラートの外側を水でぬらし、とろみを出して飲ませるとよい。袋型やフルーツ味のオブラートなど様々なタイプがある。薬をしっかり包んだオブラートをコップの水に入れてとろみをつけてスプーンで飲ませる方法もある。

[漢方薬]
・漢方を飲みやすくするなら、ココアである。どの漢方薬でも味を消してくれる万能選手である。
ココアの油性成分が舌の味蕾を覆ってバリアとして働き、苦味感覚をブロックし、飲みやすくする。

・森永のQ&Aより
ココアのカフェインは、コーヒーや紅茶の約10分の一。
月齢の小さな赤ちゃんには刺激が強いので与えない。1歳を過ぎて離乳も進んでいればOkである。

・漢方をジュースなどの液体に溶かす場合は、エキス剤を少量のお湯で練ってから溶かす。
ティースプーン1杯のお湯で練り、5分ほど放置してジュースを1回50㏄を目安に混ぜる。
全量が25ml以下では味が濃く、50mlを超えると量が多いので飲み残しが増えるケースが多いためである。

・ペースト状(メープルシロップなど)や半固形状(アイスクリームなど)にする場合は、エキス剤をあらかじめつぶしてから混ぜ込む。
エキス剤の袋の上からマジックインキを転がす、あるいはエキス剤に直接スプーンの裏で押しつぶす、百円ショップのすり鉢・すりこぎなどを使うと便利である。

・クラシエの細粒は細かいが、添加されている乳糖の量がツムラより少ないようで、漢方の味が強いらしい。

・アイスクリームは味の濃いハーゲンダッツがオススメである。

・後味を消すために、最後に水を飲ませる。

繰り返しになるが、以下の2点は説明しておきたい。
・混ぜているところを見られないようにする。
・主食(ミルク、ごはん)には混ぜない。

[小児の年齢別に服用を考える]
乳児(1ヶ月~1歳未満)
・小さな容器の中に粉薬をあけ、数滴の水を加えて、ペースト状に練る。手をきれいに洗って、練ったお薬を指先につけ、口の中に塗りつける。舌の上に塗ると苦味を感じるため、頬の内側か上あごがよい。そのあとはお薬が口の中に残らないように、飲み物を飲ませる。

・小児向けの剤型の場合、同じように小さな容器の中に粉薬をあけ、少しずつ水を加えて、液状にしてスプーンやスポイトを使って飲ませる方法もある。

幼児(1~5歳)
・粉薬に水を少量(5mLから始めて20mL 位まで)加えて溶かして飲ませる。そのあとはお薬が口の中に残らないように、飲み物で流す。

・1回分のお薬にスプーンで極少量(スプーン1杯以下)の水を入れ、手早くかき混ぜて、そのスプーンでお子さまの口のやや奥にお薬を入れる。そのあとはお薬が口の中に残らないように、飲み物で流す。

[シロップ]
シロップ剤は、飲ませる前に、ビンを軽く振り中身を均一に混ぜる。冷蔵庫などの冷所に保存するものが多いので、「冷所保存」の場合には、薬袋に記入しておきたい。

[坐薬]
坐薬で多い質問が、坐薬を入れた後にすぐにお尻から出てきてしまったときの対応である。
坐薬を入れて10分以内に出たときには、もう1回入れなおす。10分以上経っていて、出てきたものに形がなければ、すでに薬が吸収されている可能性があるので、そのまま入れなおさずに様子をみる。

[頓服] 解熱)
・目安として、37.5度を越える場合に頓服の服用を考える。解熱剤の効果は4~6時間のため、次に解熱剤を使用するまで5~6時間空けるように指導する。使用回数は1日2~3回ですが、年齢・体重を考慮する。

・熱性けいれんの予防のため、抗けいれん剤が一緒に処方されることがある。
一般的に、抗けいれん坐薬(ダイアップ坐剤)と解熱用坐薬を一緒に使う場合、30分以上間隔を空ける必要がある。同時に使った場合、抗けいれん剤の吸収が遅れてしまい、けいれん予防の効果が弱くなる可能性があるため。まず、抗けいれん坐薬を入れて、30分以上間隔を空けてから、解熱用坐薬を入れるように説明する。

・薬を飲んだ後、すぐに吐いてしまった場合は、もう1度1回分の薬を飲ませる。しかし、30分以上経って吐いた場合は、薬が吸収された可能性があるため、もう1度飲ませる必要はない。

[薬と食品の相互作用]
薬の中には食品との飲み合わせを注意しなければならないケースがある。特に抗生剤の中には、特定の食品を混ぜると苦味が出たり、吸収が悪くなって効果が落ちることがある。

・酸性飲料:オレンジジュース(柑橘系)、乳酸菌飲料、スポーツドリンク 
→マクロライド系抗生物質(クラリス、クラリシッドなど)、ペニシリン系抗生物質(ユナシンなど)の一部
※これらの薬剤は、酸性の条件で成分が溶出するように設計されているため。

・乳製品:牛乳など
→テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシンなど)、ニューキノロン系抗菌薬(オゼックス、バクシダールなど)の一部
※乳製品の中のカルシウムと抗生剤がキレートを形成して、吸収が落ちるため。

[最後に]
以上、自分がこれまでに勉強してきた小児の患者さんへの服用に関する工夫点をまとめた。このコンテンツが、小児の医療に携わる方のお役に立てば望外の幸せである。
なお、ここに紹介した内容以外の工夫や裏技を勉強できたときには、追記していきたいと考えている。

最後までお読みいただいた方すべてに心から感謝します。

 

[参考資料]
「電話相談からみた小児服薬指導の問題点の解析」:2年間の薬歴から抽出した電話による問い合わせから
松本康弘ら 日本薬剤会雑誌 第60巻 第5号 平成20年5月1日 607-611

「小児に対する与薬方法の実際」
石川洋一 日本薬剤師会雑誌 第61巻 10号 平成21年10月1日 1255-1258

たけい小児科・アレルギー科 
http://takei-c-2.blog.jp/archives/cat_309892.html

「ちいさなお子さまへのおくすりの上手な飲ませ方・使い方ハンドブック」
JA 北海道厚生連旭川厚生病院 薬剤部

国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
トップ>患者・ご家族の方へ>病気に関する情報>お薬Q&A
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/medicine/

「小児の内服薬の服薬支援」
土谷総合病院トップ>診療科・各部門>薬剤部>小児の内服薬の服薬支援
http://www.tsuchiya-hp.jp/tsuchiya/department/bumon/pharmaceutical/folder173/kusuri-no-mado-201903.html

「小児への薬の飲ませ方の工夫と注意点」
磐田市立総合病院
ホーム  > くすりの話  > 第10話 小児への薬の飲ませ方の工夫と注意点
https://www.hospital.iwata.shizuoka.jp/medicine/010/index.html

以上