[すご本16 白隠禅師 健康法と逸話]


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[すご本16 白隠禅師 健康法と逸話]
「白隠禅師 健康法と逸話」
直木公彦
(日本教文社)

この本は「呼吸法」を勉強したいと思っている人と、現在、何らかの病で悩んでいる方にオススメする。

呼吸法は、人間にとって大変重要でありながら、取り扱われることが少ないテーマのひとつである。
その重要性は、各種の宗教、武道、芸道などにおいて優先順位の高い項目になっていることでも理解できる。
呼吸法の効能はガス交換(酸素と二酸化炭素など)だけではなく、自律神経の調節であり、日常生活から有事の際まで応用範囲は極めて広い。

最近では、自律神経を整える主旨の医学書にも「呼吸法」が一部掲載されているが、もっと広く一般向けに啓発されてよいテーマであろう。
私自身も遅まきながら呼吸法の重要性を認識し、自分で勉強を始めたのだが、すぐに大きな壁にあたった。
それは、決定的なテキストがないことでである。
何冊かの呼吸法に関する本を読んだのだが、微妙に方法が異なっていたり、スクールの勧誘が結論になっていた。
それらの書籍の中で、最も感動したのが本書である。

この本は、厳密には呼吸法のノウハウを解説した本ではない。
白隠自身の紹介と実際に白隠が行った養生法・健康法をわかりやすくまとめたものである。
したがって、呼吸の生理的な機能やメカニズム、呼吸法による臨床のデータなどは一切書かれていない。
(これらについては、「呼吸の極意」永田晟 講談社ブルーバックス がわかりやすい。)
それでも「すご本」として紹介する理由は、本書の内容が呼吸法にとどまらず、体と心の療養の方法を学べるからである。

本書は初版が昭和30年9月25日であり、発刊以来50年以上が経過しているにもかかわらず、いまだに出版されている。
このこと自体が、この本の価値を証明していると言ってよい。

現在の本の多くは、いろいろな文章に関するテクニックを駆使して作られ、販売されている。
心理学的なテクニック、各種のマーケティング手法やビジネス理論、読ませるための文章作法など。
このことは、読みやすくするメリットはあるが、作為的な文章にもなっていることが多い。
本書は、これらのテクニックとは無縁である。(ちなみに文字も小さいが・・)
しかし、その文章は朴訥でありながら誠実であり、科学的なデータは無いが納得できるのである。
これは著書の人柄による部分が大きいからであろう。
ちなみに著者は、特許を350以上も擁する一流の土木技術者であり、作家でも宗教家でもない。
ご自身も結核や手術の失敗などの辛苦を奇跡的に克服した経験があり、そのときに白隠の養生法に触れた縁で白隠の研究を25年以上続けた人である。
この本は、白隠の人と業績を紹介し、養生法の「内観の秘法」と「軟酥の法」の実習と効果について、一般の人にもわかりやすく読んでもらうことを目的に書かれている。
もちろん、心身の病で悩んでいる人を救うためである。
白隠の呼吸法は、各種の呼吸法の書籍でも紹介されていますが、本書はその解説本として最適だと思う。

「白隠禅師 健康法と逸話」
直木公彦
(日本教文社)

=目次=
新版にあたり
この本を読む人のためにーはしがきに代えてー

1 白隠禅師の人と仕事
2 『夜船閑話』
3 内観の実習・効果・その理由
4 軟酥の法
5 『遠羅天釜』
6 病める友へ
7 生も死も
8 悟りと療病法
9 正念の力
10 無我帰一と感謝
11 白隠禅師の民衆の教化
12 白隠禅師の逸話
夜船閑話序(原文)
夜船閑話(原文)
遠羅天釜中巻(原文)
坐禅和讃
あとがき

以上