[がん疼痛緩和ケアPLUS]④-2 オピオイドを調剤するということ(調剤篇)


[がん疼痛緩和ケアPLUS]④-2 オピオイドを調剤するということ(調剤篇)

このコンテンツでは、オピオイドを調剤するときに注意するべき点を考察する。
主に法的な規制、管理に関する情報を整理する。

[薬剤の交付]
初めてオピオイドが処方されたときやオピオイドスイッチングで処方が変更されたとき、薬の在庫がないときがある。
このような場合には、薬剤を至急手配するのだが、オピオイドは患者さんの代理人にもお渡しできることは覚えておこう。
患者さんの病状等の事情により、患者さん本人やご家族がオピオイドを受領することが困難な場合には、患者さん・家族の依頼を受けた看護師や介護にあたる者等に手渡す事ができるのである。
ただし、不正流通防止のため、当該者が看護師等であって患者より依頼を受けた者であることを書面や電話等で確認する。なお、書面には特定の様式はない。

ファクシミリにより送信された麻薬処方せんの処方内容に基づきオピオイドの調製等を開始することは、一般薬と同じように可能である。その後、実際の処方せんを受けとり、内容を確認してから薬剤を交付する。

[オピオイドの発注と在庫管理]
オピオイドは薬局に納品されると、未開封でも返品できない。
また、オピオイドの種類や剤型の変更も日常的に起こりうる。
つまり、できるだけ在庫は置きたくない薬剤のひとつである。

では、在庫をどのように考えるかである。
対象の患者さんが一人の場合には、処方された量を次回分として確保するのが普通の薬の原則。オピオイドの場合には、最低限、前回処方されたオピオイドの2~3日分以上の在庫を確保しておきたい。
在庫を2~3日分以上としたのは、医薬品卸からの即日の納品が難しい場合があることと薬局の定休日前の終了間際に処方せんを受け取った場合を想定してである。
ちなみに、医薬品卸によっては納品に2日以上を要する場合もあるため、納品の確認は必須である。

[オピオイドの保管]
オピオイドは、薬局内に設けた鍵をかけた堅固な設備内に保管しなければならない。
「鍵をかけた堅固な設備」とは、麻薬専用の固定した金庫又は容易に移動できない金庫(重量金庫など)で、施錠設備のあるものをいう。
ちなみに、麻薬保管庫内には、その他の医薬品、現金及び書類等を一緒に入れることはできない。
定期的に帳簿残高と在庫現品を照合し、在庫を確認することが必要なのは言うまでもない。

[オピオイドの記録]
薬局では、オピオイドを譲り受けた場合、譲り渡した場合、紛失、廃棄した場合(要するにオピオイドが増えたり、減ったりしたとき)に、記録しなければならない。その内容をまとめると、以下の3点になる。

①「譲り受け」又は「譲り渡し」又は「廃棄」したオピオイドの品名、数量及びその年月日
※譲り渡したオピオイドの場合:コデイン、ジヒドロコデイン、エチルモルヒネ及びこれらの塩類については、記載する必要はない。

②麻薬事故届を提出した場合は、届け出たオピオイドの品名、数量及び事故年月日
※届出年月日については備考欄に記載

③廃棄したオピオイドについては、備考欄に届出年月日

これらの記入には、万年筆、ボールペン等の字が消えないものを使用する。
ちなみに、その帳簿は脱着式のルーズリーフでもOKである。
帳簿の訂正は、管理者が訂正すべき事項を二本線等により判読可能なように抹消し、訂正印を押し、その脇に正しい文字等を記載する。
修正液等は使用してはならない。
オピオイドの受け払い等をコンピュータを用いて処理し帳簿とする場合は、定期的に出力された印刷物を1ヶ所に整理しておく。
(立入検査等の際に提示できるようにする。帳簿に麻薬取締職員等の立会署名等を必要とすることもある。)

注意したいのは、患者の死亡等の理由により患者の家族等から返却されたオピオイドについても品名、数量、年月日を帳簿に記載する必要があること。

[オピオイドの譲受け、譲渡し]
麻薬卸売業者からオピオイドを譲り受けるときには、麻薬譲渡証及び麻薬譲受証の交換が必要である。
麻薬譲受証に記載が必要な項目は、以下の項目である。
・免許番号
・免許の種類
・譲受人の氏名(法人にあっては名称、代表者の職名及び氏名)
・麻薬業務所の所在地・名称
・譲り受けようとするオピオイドの品名・数量等必要事項

上記の項目を記載のうえ、押印する。
その印は、法人にあっては代表者印又は麻薬専用印(他の用務と併用する印は認められない。ただし、覚せい剤原料の印を除く。)を使用する。
また、余白部分には、斜線を引くか又は「以下余白」と記載する。
なお、薬局が医薬品卸がある地域から遠隔地にある場合等は、オピオイドを医薬品卸から書留便等の郵送により譲り受けることは差し支えない。

薬局は原則として麻薬処方せんの交付を受けた者に対し、その処方せんにより調剤したオピオイドを交付する以外に譲渡することはできない。
また、医薬品卸へ返品することもできない。
しかし、例外的に薬局間でオピオイドの譲渡ができるケースが設けられた。
(2007年9月の麻薬及び向精神薬取締法施行規則改正により)
ただし、これを行うには事前に近隣の薬局と共同で麻薬小売業者間譲渡許可申請を所在地を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部に提出しなくてはならない。
申請する薬局はいずれも、当該免許に係る麻薬業務所の所在地が同一の都道府県の区域内にあることが条件である。

[オピオイドの廃棄]
オピオイドを廃棄する場合に注意するべき点は、ケースにより都道府県知事に提出する届が異なることである。
ケースは、3つのパターンに分類され、それぞれ異なる届で処理する。

①期限切れ、変質、調剤ミスなどのケース
②患者さんに交付された麻薬が必要なくなり、薬局で回収したケース
③盗取、破損、流失などの突発的な事故のケース

それぞれのパターンを紹介する。
①期限切れ、変質、調剤ミスなどのケース→「麻薬廃棄届」
古くなったり、変質等により使用できないケース、調剤ミスにより使えなくなったケースでオピオイドを廃棄しようとするときは、あらかじめ「麻薬廃棄届」を都道府県知事に届け出る。廃棄は麻薬取締員等の指示に従う。
※届出た後でなければ廃棄することはできない。

②患者さんに交付されたオピオイドが必要なくなり、薬局で回収したケース→「調剤済麻薬廃棄届」
処方せんにより交付されたオピオイドを、患者の死亡等により遺族等から譲り受けた場合は、麻薬小売業者(薬局開設者)自ら、若しくは管理薬剤師が、他の薬剤師又は職員の立会いの下に廃棄する。
廃棄は、焼却、放流、酸・アルカリによる分解、希釈、他の薬剤との混合等、オピオイドの回収が困難で適切な方法で行う。
また、廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」により都道府県知事に届け出る。
30日以内であればその間の複数の廃棄をまとめて一つの届出書で提出してもよい。
なお、これらの廃棄は、帳簿に記録する必要がある。

③盗取、破損、流失などの突発的な事故のケース→「麻薬事故届」
薬局のオピオイドが、滅失、盗取、破損、流失、所在不明その他の事故が生じたときは、すみやかにそのオピオイドの品名及び数量その他事故の状況を「麻薬事故届」により都道府県知事に届け出なければならない。
届出に当たっては、次の事項に留意する。
・麻薬を盗取された場合には、すみやかに警察署にも届け出る。
・麻薬事故届を提出した場合には、帳簿の受払簿の備考欄にその旨記載し、麻薬事故届の写しを保管する。
・アンプル注射剤の事故に伴い、廃棄する必要がある場合、麻薬事故届にその経過を詳細に記入することで麻薬廃棄届、調剤済麻薬廃棄届の提出は必要ない。

紹介した提出書類(各種届)はすべて都道府県知事宛てに提出する。
※提出書類(各種届)の用紙を入手するには、都道府県のホームページの担当部署にアクセスするとよい。

以上、簡単にポイントを紹介したが、廃棄についてはコンテンツ[薬剤師が知っておくべきこと「廃棄」]でも解説している。

[オピオイドと海外渡航]
オピオイドを携帯して海外旅行をする場合は、許可が必要になる。
注意するべき点は、日本の法律と渡航先の国の法律の両方をクリアしなければならないということ。

許可を受けるには、麻薬携帯輸出許可申請書または麻薬携帯輸入許可申請書(携帯して出入国する場合は両方)※を作成し、医師の診断書を添えて申請者の住所あるいは入港する港や空港を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部に出国日又は入国日の2週間前までに提出する。
(短期的に海外渡航した後帰国する場合など、同時に提出可)
出入国の2週間前までにとなっているが、時間的に余裕を持って申請するのが正解。

申請書様式は地方厚生(支)局にて入手できる。
申請書の作成などの手続きについて、各地区の地方厚生(支)局麻薬取締部にて相談を受付けている。
申請書類に不備がなく、許可が行われた場合には、麻薬携帯輸出許可書または麻薬携帯輸入許可書(ともに日本語で記載)及び麻薬携帯輸出許可証明書または麻薬携帯輸入許可証明書(ともに英語で記載)が各1通ずつ交付される。
出国あるいは入国時に税関でこれらの書類を提示する。

≪申請書の内容≫
①申請者の氏名、住所
②携帯して輸入し、又は輸出しようとする麻薬の品名及び数量
③入国し、又は出国する理由
④麻薬の施用を必要とする理由
⑤入国又は出国の期間
⑥入国又は出国の港
詳細については、地方厚生局麻薬取締部「麻薬取締官」のホームページ等で確認できる。

申請書と共に提出する医師の診断書には、疾病名、治療経過及び麻薬の施用を必要とする旨が記載されていなければならない。

渡航先によっては、主治医の診断書(英語)及び我が国の地方厚生(支)局麻薬取締部で発行された麻薬携帯輸出(輸入)許可証明書(英語)以外にも書類や事前の許可手続きが必要な場合がある。
日本とは麻薬法に対する規制が異なっているからだ。
当該国への麻薬等の携帯輸入若しくは当該国からの携帯輸出の可否等不明な点がある場合、各国の在日大使館等に問い合わせ、事前に許可等が必要な場合には、その許可等取得の手続きについても確認しておく。

医薬品と海外渡航については、コンテンツ[薬剤師が知っておくべきこと 海外旅行と医薬品]でも解説している。

以上、薬局でオピオイドを調剤するのに必要な情報を整理したが、やはり手元にマニュアルは置いておきたい。
「医療用麻薬適正使用ガイダンス」「薬局における麻薬管理マニュアル」は入手しておこう。

次のコンテンツは、「オピオイドの服薬指導」について考察する。

[参考資料]
・「薬局における麻薬管理マニュアル」平成23年4月
厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/mayaku_kanri_02.pdf

・「医療用麻薬適正使用ガイダンス」がん疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス 平成29年4月
厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/iryo_tekisei_guide2017a.pdf

・「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」令和2年9月 
東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/iyaku/sonota/toriatsukai/haiki.files/R02haikihouhou.pdf

以上