[がん疼痛緩和ケアPLUS]④-1 オピオイドを調剤するということ(基礎篇)


[がん疼痛緩和ケアPLUS]④-1 オピオイドを調剤するということ(基礎篇)
このコンテンツでは、オピオイドを薬局で調剤するうえで、押さえておきたい業務上のポイントを考察する。
具体的には、処方内容の確認、オピオイドの調整、発注、管理、廃棄などで、基礎篇と調剤篇に分けて情報を整理する。

基礎篇ではオピオイドの使い方を復習し、処方内容の確認に役立つ情報をまとめる。
処方内容が適切かどうかは、各薬剤の添付文書だけでは不十分であり、疼痛薬物療法の基本方針やオピオイドのポジショニングを理解することが必要である。
これは、処方鑑査だけでなく、処方意図の理解、処方提案、患者さんへの服薬指導にも役立つ。
調剤篇では、主として法的な規制、オピオイドの管理について情報の整理をする。
では、基礎篇をスタートする。

[がんの痛み]
痛みの薬物療法は、WHO三段階除痛ラダーが基本的な考え方である。
テキストによっては、EAPC(European Association of Palliative Care)のガイドラインを紹介しているが、両者とも基本的な考え方は同じである。
痛みのレベルを三段階に階層化し、第一ステップは非オピオイド、第二ステップ以降はオピオイドを処方していく。
痛みの強さ、オピオイドの効果を考慮しながら、オピオイドを変更したり、増量して症状をコントロールする考え方である。
原則的には、オピオイドはNSAIDs(含むアセトアミノフェン)の効果不十分例に処方されるのである。
(もちろん、痛みの程度が非常に激しい場合は、いきなりオピオイドから開始する。)

痛みの診断・治療のときに、まず考えるのが痛みの種類と原因である。
患者さんの状態、痛みの原因を勘案し、鎮痛剤の種類、剤型、用法が決められる。

剤型と用法を考えるうえで重要なのは、痛みが出現する時間である。
痛みは、持続するタイプ(持続痛)と一過性のタイプ(突出痛)に分かれる。

持続痛:「24 時間のうち12 時間以上経験される平均的な痛み」として患者によって表現される痛み。
突出痛:持続痛の有無や程度、鎮痛薬使用の有無に関わらず発生する一過性の痛み、または痛みの増強。がん患者の約70%にみられ、進行がんで発生頻度が高くなる。

原則的には、持続痛には長時間作用する薬剤が選択され、突出痛には速効性の薬剤が選択される。
これは、そのままオピオイドにも当てはまる。

がんの痛みは、「持続痛」と「突出痛」が混在するケースが多い。
このようなケースでは、長時間作用するタイプ(徐放性製剤)と速効型のタイプが併せて処方される。
1日24時間をカバーする基本処方に加え、それでも痛む場合の「頓服」を出すと考えるのがわかりやすい。
ちなみに、突出痛の頓服的な処方を「レスキュー」という。
一般的には、レスキューには、定時に用いている徐放性製剤と同じ成分のものを用いる。
これは、モルヒネ換算で総投与量を把握しやすいためである。
ケースによっては、異なる成分の薬剤が投与される場合もあるが、これは剤型の選択に伴うことが多い。
(たとえば、フェンタニル貼付剤の場合は速放性のモルヒネまたはオキシコドン製剤を用いる。)
レスキュー1回量は徐放性製剤1日量(内服量に換算)の1/6 を目安に設定する。
内服速放性製剤は投与後30分〜1時間後に効果が最大となるので、効果を確認するはこの時間帯に行う。

鎮痛剤の処方を考えるうえで重要なのは、痛みを起こす原因である。
オピオイドは非常に優れた鎮痛剤だが、効きにくいケースがあるからだ。
痛みには、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛があり、侵害受容性疼痛は内臓痛と体性痛に分けられる。 [コンテンツ②痛み 参照。]
オピオイドが最も効果を示すのは、侵害受容性疼痛の内臓痛であり、このケースでは積極的に使用し、効果不十分な場合には増量する。
ところが、これ以外のケースではオピオイド単独で十分な効果を示す割合は減少する。
ゆえに、鎮痛補助薬が追加されたり、別の鎮痛療法が選択される。
痛みの原因によっては、オピオイドを増量しても十分な効果が得られず、副作用が増強される場合もあることは肝に銘じておきたい。、

具体的なケースを挙げてみよう。

・神経障害性疼痛
末梢及び中枢神経系の直接的損傷に伴って発生する痛みである。このケースでは、鎮痛補助薬が追加されることが多い。
鎮痛補助薬とは、三環系抗うつ薬、抗けいれん薬、末梢性神経障害性疼痛治療薬、抗不整脈薬、NMDA受容体拮抗薬などである。

・骨転移痛(侵害受容性疼痛の体性痛)
オピオイド単独で緩和されるケースは少ない。
この場合には、放射線療法またはビスホスホネート(商品名ゾメタ)が有効であることが多い。

このように痛みの種類によって、オピオイドだけでコントロールするのが難しいことを理解しておくのは大切である。
痛みの種類によっては、オピオイドの増量の判断が異なるからだ。
痛みの原因により、その痛みに最も有効な薬剤や他の治療法の選択を考えることが重要なのである。
このことは、オピオイドの過量投与による副作用の発現を防ぐのにも役立つ。

≪まとめ≫
・「痛みの治療で重要なのは、痛みの種類・原因を知ること」である。
・痛みには「持続痛」と「突出痛」があり、がんでは両者が混在するケースが多い。
・鎮痛剤は原則「持続痛」には長時間型(徐放製剤)、「突出痛」には速効型が処方される。
・ほとんどのオピオイドは、NSAIDs(アセトアミノフェン)が効果不十分の場合に、変更または追加で処方される。
・痛みの原因によって、オピオイドの効果が不十分な場合がある。
・オピオイドの効果が不十分な場合は、痛みの原因によって、オピオイドの増量、鎮痛補助剤の追加や治療法の変更が行われる。

[オピオイドの処方]
オピオイドは大きくわけて「弱オピオイド」と「強オピオイド」に分類できる。
弱オピオイド:コデイン、トラマドール(ペンタゾシン)
強オピオイド:モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、タペンタドール、メサドン、ブプレノルフィン

ここで、ややこしいのが「トラマドール」(ペンタゾシン)と「ブプレノルフィン」は、麻薬指定を受けていないこと。
通常、オピオイドは麻薬のことと考えてしまうが、必ずしもイコールではない。オピオイドとは「中枢神経や末梢神経に存在する特異的受容体(オピオイド受容体)への結合を介してモルヒネに類似した作用を示す物質の総称」である。
「ペンタゾシン」「ブプレノルフィン」は、「天井効果」(鎮痛効果の有効限界)があるので、精神依存や大量投与時の呼吸抑制等が軽度であり、麻薬指定は受けていないオピオイドである。

これまでに紹介したように、非オピオイド鎮痛剤で効果が不十分の場合に、弱オピオイドもしくは強オピオイドの低用量が選択される。
その際には、投与経路、痛みの強さ、副作用の程度、咳・呼吸困難の有無などが考慮される。
処方されたオピオイドの効果・副作用をみながら、増量やオピオイドの変更、鎮痛補助剤の追加などが行われる。

「持続痛」があるケースは、徐放性製剤の定期投与を基本とする。
オピオイド鎮痛薬は鎮痛がいつも維持されるように定期的な投与を行い、間欠的な痛みや一時的に現れる強い痛みにはレスキュー(臨時追加)を併用する。
最も吸収が速いのは速放剤で、服用してから10分以内で吸収が始まり、効果の持続時間は3~5時間である。
徐放剤は吸収に30分~1時間かかり、効果は長時間持続する。

オピオイドが処方される際、副作用の症状を抑える薬剤が予防的に併用されることが多い。
具体的には便秘に対する下剤、吐き気に対する制吐剤である。
ただし、海外のガイドラインではこれらの予防投薬は一般的ではない。
副作用が出現した場合に、対症療法薬を飲めるようにしておくという考え方である。
確かに、テキストによって予防投与のトーンは異なっている。

オピオイドの消化器系2大副作用は、「便秘」「悪心・嘔吐」である。
便秘は必発すると考えてよい。鎮痛域の1/100以下の濃度でも出現することがある。
しかも、耐性形成はほとんど起こらないため、下剤の継続的投与が必要である。
オピオイドは便を硬くし、腸管の動きを悪くする。
そのため、浸透圧性下剤と大腸刺激性下剤の併用処方が多い。現在では、オピオイド誘発性便秘薬も開発され、選択肢が広がっている。

悪心・嘔吐は個人差があり、まったく発現しない場合もある。
鎮痛効果の1/10量で悪心・嘔吐が出現すると言われているが、実際にはオピオイド服用者の30~50%にみられる。
初回投与時または増量時に出現することが多く、数日以内に耐性を生じ、症状がおさまることがある。
ドンペリドンなどの末梢を中心に作用するタイプは効果が薄い。
糖尿病がなければ、複数の受容体への作用を持つオランザピンの少量投与が第一選択である。
(その他にはプロクロルベラジン、メトクロプラミドの経口投与)
オピオイド投与後2週間発生がなければ、制吐剤の中止を考慮する。

これまでの研究でオピオイドに関してわかっていることをまとめる。

・強オピオイドの鎮痛効果は同等である。
・強オピオイド同士の併用がすすめられる根拠は現時点ではない。
・フェンタニルは、モルヒネとオキシコドンに比べて副作用の便秘が少ない。
・モルヒネは呼吸困難に対して有効である。

[がん疼痛の薬物治療の概要] がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020(日本緩和医療学会)
それでは、日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020」のがん疼痛に対する基本的な薬物治療の概要を紹介する。

●鎮痛薬
ガイドラインでは、NRSという痛みを評価するスケールによって、推奨される薬剤を整理している。

※NRS:Numerical Rating Scale
信頼性、妥当性ともに検証され、一般的に臨床で用いられている痛みの評価スケール。痛みが全くないものを0、考えられるなかで最悪の痛みを10として点数を患者に問い、痛みの強さを評価する。
以下NRSで表記

<軽度の痛み>NRS:1~3
・推奨される薬剤:アセトアミノフェン、NSAIDs

<中等度の痛み>NRS:4~6
・推奨される薬剤:モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニル、タペンタドール

・条件付きで推奨される薬剤:
             メサドン(メサドン以外の強オピオイドが投与されているのに、適切な鎮痛効果が                                                                             得られないとき)
             コデイン、トラマドール
             ブプレノルフィン(高度の腎機能障害があるとき)

<高度の痛み>NRS:7~10
・推奨される薬剤:モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニル、タペンタドール

・条件付きで推奨される薬剤:
             メサドン(メサドン以外の強オピオイドが投与されているのに、適切な鎮痛効果が                                                                             得られないとき)

<突出痛>
・推奨される薬剤:レスキュー薬
(経口モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン速放性製剤、オピオイド注射剤のボーラス投与、オピオイド坐剤のいずれか)

・条件付きで推奨される薬剤:経粘膜性フェンタニル(フェンタニル舌下錠またはバッカル錠)

●オピオイドの有害作用に対する治療

<便秘>
・推奨される薬剤:下剤

・条件付きで推奨される薬剤:末梢性μオピオイド受容体拮抗剤

<悪心・嘔吐>
・推奨される薬剤:制吐剤

・条件付きで推奨される対応:オピオイドの変更・投与経路の変更

<眠気>
・推奨される対応:オピオイドの減量

●特定の状況の治療

<神経障害性疼痛、骨転移>
・推奨される薬剤:アセトアミノフェン、NSAIDs、オピオイド

・条件付きで推奨される薬剤:鎮痛補助薬、ケタミン(強オピオイドや鎮痛補助薬が投与されても、適切な鎮痛効果が得られていない、難治性のがん疼痛に対して)

<高度な腎機能障害>eGFR 30ml/min未満
・推奨される薬剤:フェンタニル、ブプレノルフェンの注射剤

・条件付きで推奨される薬剤:その他のオピオイド(コデイン、モルヒネは可能なら投与は避ける。投与するなら短期間で、少量から投与する。

<適切な鎮痛効果が得られない場合>
・推奨される対応:投与中の鎮痛薬を増量

・条件付きで推奨される対応:アセトアミノフェン、NSAIDsの併用。鎮痛補助剤の併用。オピオイドの変更。

<対処しうる治療を行っても許容できない有害作用>
・推奨される対応:投与中の鎮痛薬の有害作用に対する治療

・条件付きで推奨される対応:オピオイドの変更・投与経路の変更

[主なオピオイドのプロフィール]
ここでは、臨床でチョイスされることが多いオピオイドを選び、プロフィールを紹介する。

①リン酸コデイン(弱オピオイド)
モルヒネの1/6~1/10の鎮痛効果を持つ弱オピオイド。
日本人の約20~40%が代謝酵素であるCY2D6の活性が低い。つまり、コデインが効きにくい。

②トラマドール(弱オピオイド)
コデインの誘導体。
弱オピオイドに分類されているが、規制区分は「麻薬」でも「向精神薬」でもない。
本剤はマルチファンクショナル・オピオイドと呼ばれる薬剤で、μオピオイド受容体への作用とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を併せ持つ。つまり、通常のオピオイドの作用に加えて抗うつ薬の下行性抑制系への作用を持つため、神経障害性の疼痛への緩和作用が期待できる。
用法は1日4回の定時投与だが、導入時は副作用の発現を考慮して少ない投与回数(1日1~2回など)で処方されることがある。
2011年7月にはこれにアセトアミノフェンが配合されたトラムセットが発売されている。
副作用の便秘の発生頻度は低い。
痙攣発作やセロトニン症候群を引き起こすことがある。
トラマドールとその代謝物は、主に腎から代謝される。

③モルヒネ(強オピオイド)
最大の特徴は何と言っても、剤型、投与経路が多彩な点である。
経口、静脈内、直腸内、皮下、硬膜外、クモ膜下腔内

かって、がん疼痛の標準治療薬であったが、現在では使用量は減少している。
ただし、モルヒネは呼吸困難に対して効果が確認されている唯一のオピオイドである。
他のオピオイドで効果不十分のケースで、モルヒネに変更するのは有効な方法である。
モルヒネには徐放錠、徐放細粒、液剤、坐剤、注射剤などさまざまな剤形の製剤が市販されている。
腎機能低下例では使用しない方が望ましい。
(GFRが30以下のような高度な腎不全時には使用禁忌である。)
※ちなみにオキシコドンについては、一部のテキスト(特に古いもの)では「腎障害でも使いやすい」との記載がある。
しかし、EAPCのガイドラインでは、根拠となる腎不全のデータが不十分となっており、日本緩和医療学会ガイドラインでは、腎不全例に選択するときには「十分に注意し、慎重な観察が必要である」としている。

作用のほとんどは、μオピオイド受容体を介して発現

速放性製剤は、服用後0.5~1.3時間で最高血中濃度に
徐放性製剤は、服用後1.9~7.3時間で最高血中濃度に

呼吸困難・鎮咳作用も効果が示されているため、肺がんや慢性呼吸困難をもつ患者に効果が期待できる。
また、明確なエビデンスはないが、合成麻薬で効果不十分のときにモルヒネを少量切り替えるか併用すると、痛みへの効果がよくなることがあると言われている。これは、臨床医の印象である。

排泄は腎であり、高度の腎障害は原則使用しない。

④ヒドロモルフォン(強オピオイド)
モルヒネと同じく投与経路が多彩
経口、静脈内、直腸内、皮下、硬膜外、クモ膜下腔内

速放性の製剤は、0.8時間で最高血中濃度に到達する。
ほとんどは、肝臓で代謝されるが、腎機能が低下すると血中ヒドロモルフォン濃度が上昇する。

⑤オキシコドン(強オピオイド)
オキシコドンは、がん疼痛治療の主薬のひとつである半合成のオピオイドである。
モルヒネと同じような薬であるが、現在では強オピオイドの定番になった薬剤である。
テキストによってはモルヒネとの違いが記述されていることがあるが、臨床的にはモルヒネと概ね同じと考えてよい。
「緩和治療薬の考え方、使い方」森田達也著(中外医学社)によると、オキシコドンとモルヒネの鎮痛効果を比較したメタ分析でオキシコドンの効果も副作用もモルヒネと本質的に同等であると記述されている。
(「緩和治療薬の考え方、使い方」(中外医学社)P.26)
オキシコドンは、内服の徐放製剤、レスキューで使う速放製剤、内服ができなくなったときの注射薬と製剤がそろっている点が大きな利点である。

オキシコドンはほとんど肝臓で代謝されるが、約5.5~19%が未変化体として尿中から排泄される。

少し変わったメリットとして「説明がしやすい」ことを挙げる臨床医がいる。
これは、麻薬に恐怖感を持っている患者やご家族の方への説明のとき、「モルヒネ」よりも麻薬であることの印象が薄いという意味である。

⑥フェンタニル(強オピオイド)
投与経路が多彩
経皮、経口腔粘膜、静脈内、皮下、硬膜外、くも膜下腔内
合成オピオイド

フェンタニルの最大の特徴は、内服ができないケースに使える経皮吸収剤があること。
(ちなみにフェンタニルは消化管吸収における初回通過効果が高いため、市販されている製剤は注射剤と貼付剤および口腔粘膜吸収剤である。)
3日毎に貼りかえるタイプと1日毎に貼りかえるタイプの2種類がある。
いずれの薬剤も吸収速度や血中濃度の上昇は同じである。
どちらも初回投与から12時間以上経過してから有効血中濃度に入るため、それまでの間は疼痛時の速放錠を使用していく。
血中濃度の上昇が緩やかであるということは、「定常状態までに時間がかかる」「投与量の微調節が難しい」ということである。
これは、特に増量の際に注意する点である。
ちなみに、皮膚から剥がしたあと血中の有効成分が半減するのに17時間かかる。
フェンタニルはモルヒネに比較して、便秘、尿閉が少なく、患者の評価もよい場合が多い。
フェンタニルが主役になるのは、内服できないケース、モルヒネ・オキシコドンで副作用が問題になるケースである。
(フェンタニルの使用承認には、「モルヒネから切り替えて使うこと」という条件がつけられている。)
貼付に関する使用上の注意は多いが、[⑤服薬指導]にて詳しく紹介する。

静脈内投与したフェンタニルが最大鎮痛効果に達する時間は約5分

皮膚吸収は良好だが、血中濃度が安定するのに24~48時間かかる。つまり、貼付2日目で定常状態になる。

舌下錠の口腔粘膜吸収は、オピオイド速放性製剤より即効性がある。
なお、舌下錠の取扱いで頭に入れておきたいのは、「錠剤の一部の企画の表面にまだらが認められること」「吸湿により錠剤の高度が低下するため、アルミニウム袋の開封口を閉じて保存すること」「通常の錠剤よりも硬度が低いため、衝撃による破損が生じやすいこと」である。

悪心・嘔吐があるが、便秘および眠気は比較的少ない。

3日貼付用と1日貼付用があるが、1日貼付タイプは「毎日入浴してもいいように」開発されている。

⑦メサドン
調節が難しいため、取り扱う前に講習受講が必要な流通管理品目である。
アルカリ尿で腎排泄が遅延したり、自己酵素誘導を起こすこともあり、血中濃度予測は困難と考えられている。
使用にあたっては、QT延長および呼吸抑制に十分な注意が必要である。

メサドンの経口製剤のAUCは約85%で、薬効発現までは約30分である。
作用持続時間は単回投与で4~5時間、反復投与で8~12時間である。
メサドンは、ほとんど肝臓で代謝されるが、約21%が未変化体として尿中に排泄される。

⑧タペンタドール(強オピオイド)
若干のセロトニン再取り込み阻害作用があるので、抗うつ薬との併用によりセロトニン症候群の可能性がある。

副作用は眠気。他のオピオイドに比べ、悪心・嘔吐、便秘の発現率は少ない。

生体内利用率は32%。半減期は、4~5時間。
肝臓で代謝され、ほとんどが尿中に排泄される。

[麻薬拮抗性鎮痛剤]
おもしろい性質をもつ鎮痛剤。
オピオイドがいなければ「鎮痛薬」として作動し、オピオイドがいれば「オピオイドの拮抗薬」として働く。

①ペンタゾシン
最も注意するべきことは、モルヒネの長期投与患者に投与するときに、離脱症候、鎮痛効果の低下の発現の可能性があること。

副作用は、不安、幻覚である。

②ブプレノルフィン
直腸内、静脈内、皮下の投与経路がある。

主な副作用は、悪心・嘔吐、便秘、眠気である。

貼付剤(7日製剤)は、がん疼痛には使用されない。
坐薬は1~2時間で最高血中濃度に達する。

主に肝臓で代謝される。

[特殊な病態]
合併症によってオピオイドの処方を注意しなければならない点を整理する。

①腎機能障害
腎機能低下により血中濃度が上昇するオピオイド
モルヒネ
コデイン
トラマドール
ヒドロモルフォン
オキシコドン

比較的安全に腎機能障害患者に投与できるオピオイド
フェンタニル
メサドン
タペンタドール

②透析
モルヒネ、コデインは使用不可

透析の患者に比較的安全に使用できるオピオイド
フェンタニル
メサドン

③肝機能障害
ほとんどが肝で代謝されるため、投与量の減量もしくは投与間隔の延長を考えるべきオピオイド
モルヒネ
ヒドロモルフォン
オキシコドン
フェンタニル
コデイン
トラマドール
メサドン
タペンタドール

[処方せんの確認]
オピオイドの処方を確認するとき、注意するべきポイントを考察する。

まず、第一に大切なのは、処方せんが本物がどうかを確認すること。
処方せんをカラーコピーして偽造し、薬局に持ち込むといった事件が頻発しているためである。。

処方せんが本物であれば、次に備考欄に記載されている処方元の麻薬施用者免許番号と患者さんの住所を確認する。
念のため、住所は直接、患者さんやご家族にも確認しておきたい。
※その他の確認しておきたい情報(たとえば、同居している家族など)については、[コンテンツ⑤オピオイドの服薬指導]で考察する。

次に処方医の資格確認(あるいは登録)が必要な薬剤かどうかを確認する。これは、医師免許のことではなく、処方する薬剤が「流通管理品目」であるかどうかのことである。
2016年7月現在、以下の3成分が該当する。

・フェンタニル貼付剤
 処方する医師は適正使用講習e-learningの受講が必要である。
 処方に際して確認書を作成、患者と医師双方で保管し、調剤を受ける際患者は確認書の提示が必要である。

・ブプレノルフィン貼付剤
 処方する医師は適正使用講習e-learningの受講が必要である。

・メサドン塩酸塩(NMDA受容体拮抗薬)
 処方する医師は適正使用講習e-learningの受講と登録が必要である。
 調剤する薬剤師も適正使用講習e-learningの受講と登録が必要である。

その患者さんに初めてオピオイドが処方された場合は、併用薬もチェックする。

オピオイドスイッチングのときには、換算表で処方量を確認する。
高用量のオピオイドの場合、症状が良くない場合、高齢者の場合には特に注意する。
また、オピオイドの先行薬と変更薬の投与間隔をチェックする。

≪まとめ≫
・処方せんの備考欄に処方元の麻薬施用者免許番号と患者の住所
→住所は直接、患者さんへ確認しておく。
・処方医の資格確認が必要な薬剤かどうか。
フェンタニル貼付剤の場合は確認書の有無。
・併用薬(副作用の予防的投与)
・オピオイドスイッチングの投与量、用法の確認。
・すべての服用薬の相互作用を確認。

≪補足≫
フェンタニル貼付剤:処方する医師は適正使用講習e-learningの受講が義務付けられている。処方に際して確認書を作成、患者と医師双方で保管し、調剤を受ける際患者は確認書の提示が必要である。流れをまとめると、以下のようになる。

フェンタニル経皮吸収型製剤の流通管理
① 医師は製造販売業者の提供する講習(e-learning)を受講
② 製造販売業者は講習を修了した医師に対し当該医師専用の確認書を発行
③ 医師及び患者は処方時に確認書に署名
④ 確認書の一方を医療機関が保管し、もう一方を患者に交付
⑤ 薬剤師は患者から麻薬処方せんと共に確認書の提示を受け調剤、確認書が確認できない場合には、処方医が講習を修了した医師であることを確認した上で調剤する

以上、オピオイドの基本情報と処方せんの確認事項を整理した。
次は、「調剤篇」でオピオイドを調剤するときに必要な情報を考察する。

[参考資料]
・「間違いだらけの緩和薬選び」世界一簡単な緩和薬の本 Ver.2 大津秀一(中外医学社)

・「緩和治療薬の考え方、使い方」 森田達也(中外医学社)

・がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020 日本緩和医療学会

・「薬局における麻薬管理マニュアル」平成23年4月
厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課

・「医療用麻薬適正使用ガイダンス」がん疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス
厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課

・「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」令和2年9月 東京都福祉保健局

以上