[がん疼痛緩和ケアPLUS]①前口上


[がん疼痛緩和ケアPLUS]①前口上
「がん疼痛緩和ケアPLUS」は、文字通り、がんの疼痛緩和ケアについて考察するシリーズである。

がんの疼痛緩和ケアをテーマにする理由は、2つある。
ひとつ目は、将来「在宅」における患者数の増加が予想されるのは「認知症」と「がん」であること。
ふたつ目は、直近10年の間にがん緩和ケアの考え方が大きく変化し、新しい薬剤(剤型追加・適応追加)も数多く上市されたことである。

厚生労働省の人口動態統計によると、日本における令和元年の死亡者数は138万1098人である。
死亡数を死因順位別にみると、第1位は悪性新生物<腫瘍>で37万6392人である。
死因別の死亡率の年次推移をみると、悪性新生物<腫瘍>は一貫して上昇しており、昭和56年以降死因順位第1位となっている。令和元年の全死亡者に占める割合は27.3%であり、全死亡者のおよそ3.7人に1人は悪性新生物<腫瘍>が死因となっている。
がんの死亡数と罹患数は、人口の高齢化を主な要因として、ともに増加し続けている。

厚生労働省の「死亡の場所別にみた死亡数・構成割合の年次推移」によると、平成21年にご自宅で亡くなられた方の割合は12.4%であった。
これは、欧米と比較するとかなり低い数字であり、今後は在宅医療の推進により最後(看取り)まで在宅で療養される方の割合は増加するであろう。

在宅療養のがん患者さんは、確実に増加する。
在宅をしている調剤薬局において、がん疼痛緩和治療薬を調剤する件数は間違いなく増える。
これがこのコンテンツを作成しようと思った理由である。

世界レベルで見ると、がん緩和ケア(特に疼痛治療)の考え方が大きく変化したのは、ここ30年である。
WHOは各国の専門医による研究をまとめ、1986年に「WHO方式がん疼痛治療法」を提唱した。
これは、1980年代に行った調査で、欧米のような先進国でもがん患者さんの50~80%は十分な疼痛治療を受けていないことがわかったからである。
従来の緩和ケアは、がんを縮小させる治療が終了し、いわゆる手の施しようがなくなったケースに行われていた。
これに対し、WHOの概念は「がんの苦痛は診断されたときから始まる。そのため、苦痛を取り除く緩和ケアは診断された時点から始まる」というものである。
日本では2006年に「がん対策基本法」が制定され、がんの疼痛に対する緩和ケアは重点目標のひとつに設定された。
その中心的な対策として、医師向けの研修プログラム「PEACE」が各地で継続的に開催されている。

がんは、身体的苦痛(痛み、倦怠感など)だけではなく、精神的苦痛(不安、恐怖など)も患者さんを苦しめる。
苦痛の種類も多彩なうえに、症例によって発生する症状や程度もさまざまである。
これらに対応するためには、各分野のプロがチームを組み、個々の症例にフィットした最適な戦略を立てる必要がある。
薬剤師は、NSAIDs(アセトアミノフェン)、オピオイド、鎮痛補助剤を中心に薬物療法の情報部門を司る役割である。
がん疼痛緩和治療薬は、この10年間で多くの新薬、新剤型、適応追加があった。
最近では、2018年にヒドロモルフォン「ナルベイン注」が、2019年には「ラフェンタテープ」が発売され、鎮痛効果が72時間持続する貼付剤が登場した。

加えて、「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」は、2020年に6年ぶりに改訂されている。
このコンテンツは、それらの情報を勉強した内容をまとめたものである。在宅に従事する医療関係者に本コンテンツが少しでも役立てば、望外の喜びである。

[がん疼痛緩和ケアPLUS]コンテンツ一覧
①前口上
なぜ、「がん疼痛緩和ケア」なのか?

②痛み
「痛み」に関する基礎知識の復習。
がん疼痛緩和ケアにおける基本的治療方針の生理。

③日本緩和医療学会 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020
標準的な薬物治療を勉強するための第一優先のテキスト。
特に読んでおきたいポイントを整理する。

④オピオイドを調剤するということ
オピオイドに特有な注意事項(処方内容の確認、商品の発注、在庫など)について考察する。

⑤オピオイドの服薬指導
「麻薬」の説明は、飲み方と効き目だけでは不十分である。
患者さんの不安と誤解を解消するための説明を考察する。

⑥いくつかのキーポイントになる薬剤
緩和治療に使われる薬剤は、非常に多い。
ゆえに、キーポイントになる薬剤を考察する。

⑦便秘
オピオイドの副作用で、便秘は必発する。
しかし、排便コントロールなくしてオピオイド治療の成功は難しい。
あなたを便秘のスペシャリストにするための入り口になるコンテンツ。

⑧整備しておきたい資料
これさえあれば、大丈夫!
緩和ケアに関して、薬局に備えておきたい資料を整理する。

⑨スピリチャルペイン
最大の難問「スピリチャルペイン」について考察する。

[参考資料]
・厚生労働省
令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況
ホーム > 統計情報・白書 > 各種統計調査 > 厚生労働統計一覧 > 人口動態調査 > 結果の概要 > 令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/index.html

・厚生労働省
死亡の場所別にみた死亡数・構成割合の年次推移
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth5.html

以上